不定期連載街建コラム

タイル接着剤選定。選ぶポイントとは?初心者にオススメの接着剤はあるの?《第41回 街建コラム》

この頃、タイルの接着に使われるソーセージタイプの接着剤を見て思い出しました。
子供の頃祖母が障子の張替えをしていた時に使っていたのは、ソーセージの形をしたでんぷん糊だったことを。
皿に出して水で薄めて、残ったものは工作に使ったりしていました。


このコラムの目次...


いつからタイルが使用されているの?

タイルは歴史的に見てエジプト王朝時代から建物の材料として使われていたようです。美しく堅牢で、機能面でも防水性や耐火性にも優れるなど、多くの利点がありました。
装飾品のようなタイルは、それだけで宝石のような輝きを放つ芸術品です。

現在は均一に生産されているタイルですが、焼き物であるために製造過程でかなり縮むそうです。そこで美しく仕上げるために目地の役目(寸法誤差、施工による誤差の調整や温度の変化、経年変化によるゆがみを防ぐ等)があります。
もちろん機能面でも接着強度があがる、揺れなどによるひび割れを軽減する、防水性を向上させて剥離の危険を減らす等。

では、今回はまず躯体にタイルを貼る接着剤についてです。

タイルの貼りつけも、昔は現場で圧着モルタル(セメント1・珪砂1・混和剤など)を調合して作業していましたが、職人さんにより配合が均等でなく、貼る面により強度がまちまちになることから、既調合モルタル(プレミックス)が普及するようになりました。

現場でも、いろいろな材料を持ち込まなくても、均一な材料が作れるので作業効率も上がりました。
その後、内装タイルにソーセージ型の接着剤が普及しました。
家の中では火を使う場所である台所や、水回りのトイレ・洗面所・お風呂場などにタイルを使用する頻度が高く、防水性能にも優れた内装用の接着剤が広く使われます。
叉、外装タイルにも接着力の高さや優れた防水性持つ有機系接着剤は、外装工事においても高い接着力を発揮し、使用される頻度が高くなっています。

タイル工事の基礎

「タイル工事」をザックリ・おおまかに説明します。

まず、躯体の状態→タイルの重みに耐えることができるか。(躯体自体の強度)
下地の状態→不陸が無いか。表面の状態(極端にツルツルしているとか、撥水性があるとか、脆弱ではないか?)が適しているかどうか。
そのうえでタイルとの相性・下地との相性を考慮して接着剤を選ぶことになります。

コンビダン使用例(既存壁タイルにコンビダンで施工する場合)

ハネダ化学さんのコンビダン施工マニュアル(既存の壁タイルを剥がさずに、直接新しい石材やタイルを張る方法)をご紹介します。

標準仕様

工 程 使用材料 配合比 使用量 施工道具
次工程までの施工間隔
コンビダンコテ塗り コンビダン 5kgセットあたり
主材3.6kg
混和液1.4kg
塗布回数1回
塗り厚約0.4o
塗り面積約9u
ハンドミキサー
各種コテ
1時間以上(20℃)
コンビダンでタイル張り コンビダン 5kgセットあたり
主材3.6kg
混和液1.4kg
塗布回数1回
塗り面積1.5〜2.5u
(※1)
ハンドミキサー
各種コテ
おっかけ(10分以内)
タイル貼り付け 圧着工法または改良圧着工法(※2)でタイルを張り付けます。 6時間以上
目地施工 市販の外部用目地材を使用して下さい。
(※1)
使用量はタイル・石材の形状によって異なります。
(※2)
改良圧着工法:コンビダンを下地側にしごき塗り、おっかけタイルまたは石材の裏側にも所定厚塗り付けてから、張り付ける工法。裏足の深いタイルや石材に適します。
スクロール

施工手順

1.下地清掃

浮きおよび弱い部分はケレンします。320番のサンドペーパーと中性洗剤を使用し、下地面をこすり洗いし、水で洗浄後、出来る限り乾燥面に近づけて下さい。
清掃が不十分だと剥離の原因になります。

2.コンビダンコテ塗り

下地が透けない程度に塗り付けます(0.4o厚位)。
施工後、1時間以上乾燥硬化させて下さい。

3.コンビダンでタイル張り

圧着工法の場合、皮張りしますので、コンビダンをクシゴテで塗り付けたら、ただちにタイルを張って下さい。
使用するクシゴテは、タイルの大きさや裏足の深さで3・5・7・10oを使い分けて下さい。

4.タイル張り付け

コンビダンがべとついている間に、タイル張りを行ないます。
水糸に合せ、タイルを張りモミ込み、タタキ込み、固定して下さい。

5.目地施工

コンビダンが硬化後、市販の外部用目地材で施工します。

上記仕様は変更する場合がございます。施工前には、ハネダ化学の最新の仕様をご確認下さい。

タイル・石材用接着剤(一剤型)

商品名 メーカー(略称)
特徴
アイカエコエコボンドSE-35/H アイカ工業 無溶剤なのでにおいが少なく、作業効率に優れた1液タイプの変性シリコーン樹脂系内外装タイル用接着剤です。
タイルエースL Pro/Pro セメダイン 陶器質のタイル、せっ器質のタイル、磁器質のタイル、ブリックタイルの張付けに適しています。
タイルエース床用 セメダイン 床タイル用途に特化した微弾性タイプの接着剤です。
タイルエース石材用 セメダイン 内外装接着剤の中でも特に「石材」への適応に重点を置いたものです。
ボンド エフレックスタイルワン コニシ 内外装タイル・石張り用の変性シリコーンエポキシ樹脂系の接着剤です。
DボンドC 大建化学 セメント混入量を加減することにより、100角タイルから大型タイルまで、自由自在に張れるセメント混練型タイル・石材用接着剤です。
ネオピタ#マンテン  大建化学 湿気硬化型のタイル張り用一液変性シリコーンエポキシ樹脂系弾性接着剤です。
パワーボンドDX-2000 大建化学 強力な接着力をもちながら低価格を実現した内装陶磁器質タイル専用接着剤です。
GL-20 タイルメント 陶磁器質タイルをモルタル、合板、ボードなどの下地へ接着施工するのに適した内装壁タイル用の一液耐水形接着剤です。
MSフロアー10 タイルメント 床暖房下地・450角までのタイル・石材施工可能な変成シリコン樹脂系接着剤です。
フレックスマルチ タイルメント 内外装の壁面にタイルを接着する変成シリコン・エポキシ樹脂系接着剤です。
NS弾ボンド 日本化成 変成シリコーン樹脂を主成分とした内外装タイル用接着剤です。
ネバット耐水 ユニーク アクリル樹脂を主成分とした1液型内装陶磁器タイル用の接着剤です。
スクロール

タイル・石材用接着剤(モルタル系)

プレミックスのモルタル系接着剤は、不陸調整をしながらの施工に使用されるため、なくてはならない材料と言えます。

商品名 メーカー(略称)
特徴
コンビダン ハネダ化学 合板・鉄板・鋼板・ステンレスなど、特殊な下地への直接施工。有機系接着剤のような柔軟性をもちます。無機系と有機系の長所を併せもったハイブリッド型タイルモルタル
コンビハネタイル ハネダ化学 ポリマーセメント系タイルモルタルです。各種内外装タイルから大理石や御影石などの石材まで強力に接着します。
セラボーンタック ハネダ化学 1材型ポリマーセメント系タイルモルタルです。作業性や接着性能に優れ、内部施工においては下地調整からタイル張りまで対応します。
タイルセメント 青野産業 セメント・天然骨材・混和材を適正配合した土間タイル張付け用モルタルです。
KSニューベース 菊水化学 既調合の外装タイル用張付モルタル。振動工具を使った密着張り工法で目地も同時に仕上げます。
KSベース 菊水化学 保水性に優れた外装タイル用圧着モルタルです。
ドリームボンドZ 大建化学 タイル、石材などの接着剤として、また塗壁材としても使用できます。
太平洋タイルモルタルK 太平洋マテリアル 特殊粉末樹脂添加型のタイル張り付け用の一材型既調合ポリマーセメントモルタルです。
太平洋圧着セメント 太平洋マテリアル 小口・二丁掛用/モザイク用のタイル張り付け用既調合セメントモルタルです。
K-tac 東海リテック ALC面へのタイル張りが可能なタイル圧着モルタルです。
ファイバーテック 東海リテック 特殊繊維と粉末樹脂を配合した高性能タイル圧着材であり、また高性能フィラー材としても使用できます。
NSタイルセメント 日本化成 社団法人公共建築協会の建築材料等評価名簿に規定する既製調合モルタル(タイル工事用)の品質を有しています。
NSダブルワン 日本化成 エチレン酢酸ビニル(EVA)系再乳化形粉末樹脂を混合し、下地調整からタイル張付けまで可能にした一材型高性能ポリマーセメントモルタルです。
タイルボンドM20 マルユウ建材 高級アクリル粉末樹脂と特殊つなぎ材を配合することにより優れた曲げ強度が備わり、強い振動にも耐えうる柔軟性がある製品です。
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タイル・石材用接着剤(二剤型)

昨今、タイルの大型化や石材工事に伴って使用されるのが、エポキシ系の接着剤です。
施工時に2液を混合することによって硬化します。
一般的に「A・Bボンド」などと呼ばれています。

商品名 メーカー(略称)
特徴
アイボンEX-777/L アイカ工業 コンクリートおよびモルタル、その他無機質系下地材に石材、大型タイル、各種ボードを接着する場合に使用する内装用パテ状エポキシ樹脂接着剤です。
EP1000 セメダイン 現場施工用の石材の接着
スパボンド 大建化学 スパボンドは、耐酸、耐アルカリなどに効果を発揮する強力タイル接着剤です。
EPS-20ソフトタイプ タイルメント 内装石材点付け施工に適した2液混合形エポキシ樹脂系接着剤です。
ビトラック ヤシマ理化耐蝕 酸・アルカリ・油などに強く、広範囲の耐薬品性に優れています。
スクロール

Q&A(タイル用接着剤について)

Q.
ソーセージタイプの一液弾性接着剤を 簡単に絞り出す方法はありませんか?
A.
大量に使用する場合にはこんな便利な道具もあります。
【シボリくん】 ソーセージ型の一液弾性接着剤(2kg入り)を無駄なく、しぼることに特化した専用しぼり器です。
シボリくん
Q.
一液のタイル用接着剤が床に落ちてしまいました。落とし方を教えてください。
A.
まず拡げないようにしましょう。つまみ取る要領で除去して、乾燥した後に、物理的に削り取ります。砂消しゴムなども使います。
いきなり溶剤で落とそうとすると溶け出して拡がってしまいます。
タイルの種類や床の材質によっては完全には落とせません。しっかりと養生してください!
Q.
弾性って何ですか?
A.
曲げや揺れに追従しやすいタイプです。振動を受けやすい場所やたわみに対する柔軟性を発揮します。
Q.
初心者に使いやすいタイル用接着剤はありますか?
A.
材料としては1液性の物が攪拌の手間が無く使いやすいでしょうが、道具の片付けや汚した場合の清掃には、モルタル系(水で洗える)が使いやすいでしょう。
様々な下地に対応したハネダ化学の「コンビダン」は、プロの職人さんだけでなく、道具は必要になりますが、初心者の方にもオススメです。
Q.
屋外のタイル補修で使える接着剤はありますか?
A.
外装と謳われているものは大丈夫です。
Q.
接着剤の厚みはどのくらいにすればよいですか?
A.
それぞれの使用説明をよく読んでください。一般的には3mmくらいの厚みは必要です。

まとめ

長い目で見てタイルは大変丈夫な素材です。
スペースシャトルにも使われる材料なので躯体との間に入る接着剤が大変重要な役割を果たします。
いろいろなメーカーが研究を重ね開発された商品なので、それぞれのカタログをよく読んでください。


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出典・参考資料

<写真協力>