接着剤と言えば、工作などに使用する物と物を接着させる液体が思い浮かびませんか?
左官屋さんが業界用語でよく言葉にする「接着剤」とは、モルタルを塗る前に、下地のコンクリートと良く接着するために行う「モルタル塗り用 吸水調整(吸水調整剤)」として使用する場合の材料と、モルタルの接着力を高めるために「モルタル混和材(混入)」として使用する場合の材料を言い表し、正式には「モルタル接着増強剤」と言われています。
そこで今回のテーマはモルタル接着増強剤に関わる、「モルタル塗り用吸水調整(吸水調整剤)」についてまとめてみました。
このコラムの内容...
モルタル接着増強剤の用途は「吸水調整(吸水調整剤)」と「モルタル混和材(混入)」に分かれます。
「吸水調整(吸水調整剤)」は主にエチレン酢酸ビニル(EVA)、アクリルなどの樹脂を(原液の場合は水で薄める)下地のコンクリートなどへ塗布することにより、上に塗るセメントモルタルと下地との接着性能を良くします。
また、「モルタル混和材(混入)」としての使い方は、セメントモルタル(セメント + 砂 + その他混和材)、既調合モルタル(プレミックス品)などへ定められた規定量の樹脂(セメント量に対して5%程度)を混入することで、セメントモルタルの結合材として接着力を高め、強度や性能の向上に役立ちます。
そもそもセメントモルタル(モルタル)を塗る際に「吸水調整」はなぜ必要になるか、皆さんご承知ですか?
セメントは水と反応(水和反応)して凝結、さらに硬化します。コンクリート下地にモルタルを塗る場合は、下地が乾燥していると水分がコンクリートに吸収されて水和反応が阻害されてしまうため、ドライアウト(硬化不良)による接着不良を起こしやすくなります。
そのため、モルタルのドライアウト(硬化不良)を防ぐため、コンクリート、モルタル、それ以外(ALC、ケイカル板など)の吸水する下地は、必ず吸水調整を行う必要があります。
吸水調整は、モルタルが下地のコンクリートへ水分が急激に吸収されないよう、吸い込みを抑制させます。これによりモルタルに必要な水分(保水性)が維持されます。このように吸水調整は、モルタルと下地との接着力を向上させるために必要となります。
モルタル接着増強剤の成分は主に「合成樹脂エマルジョン」を使用しています。
合成樹脂は、原料の液体が重合(じゅうごう)という化学反応をして出来上がります。
重合に使われる原料を「モノマー」と言います。モノマーは小さな分子が集まったもので、単量体(単体)という意味もあります。
モノマー同士が繋がって大きな分子になる事を高分子と言います。
「ポリマー」という言葉を聞いたことがありませんか?
「ポリマー」の「ポリ」はたくさんという意味もあります。
ポリマーとは高分子のことで、重合体とも言われます。(ポリマー、高分子、重合体は同じです。)
例えば、「エチレン」と言われる原料はモノマーの一種です。
このエチレンを繋げていくと、ポリエチレンになります。
皆さんが普段身近に使われている合成樹脂のひとつとしてアクリル、ビニール、ポリエステルなどがあります。
合成樹脂の粒子が水中にある乳化剤によって均一に分散している状態を言います。
通常の外観は白色か乳白色の液体です。
エマルジョンをもう少しわかりやすく例えるなら、サラダドレッシング(水と油)を手で振った時に水と油が常に分散した状態。
粘度があるマヨネーズもエマルジョンの一例です。
ちなみに「ディスパージョン」とは分散を意味することから、モルタル接着増強剤として「ポリマーディスパージョン」を表現として使われることがあります。
その他「高分子エマルジョン」、「共重合(体)エマルジョン」
など、表現として使われることがあります。
合成樹脂エマルジョンは有機溶剤を含まないため、環境や人体への負荷が低く、その応用範囲は、接着剤、塗料、繊維加工、紙加工、建築土木分野でも多く使用されています。
建築・土木用の合成樹脂エマルジョンはアクリル酸エステル樹脂、スチレン・アクリル酸エステル樹脂、エチレン・酢酸ビニル樹脂、エチレン・酢酸ビニル・アクリル酸エステル多元共重合樹脂などがあり、
これらの成分はモルタル接着増強剤として、コンクリート、モルタル、PC板、ブロック、ALC板などの吸水調整及び補修用、セルフレベリング(SL)用プライマー、ポリマーセメント系塗膜防水材などの用途に応用できます。
エチレン酢酸ビニル系で迷ったらこれ!
発売以来40有余年、その安定した品質は今もなお業界に高い評価をいただいている製品です。
株式会社レゾナック建材 ハイモルシリーズとして信頼性の高い製品
日本建築学会・M-101規格適合品、国土交通省営繕工事適合品です。
モルタル接着増強用のエチレン酢酸ビニル共重合樹脂エマルジョンです。
塗布または混入することで、モルタルとの混和性、接着性、皮膜の耐水性、耐アルカリ性、耐候性において優秀な性能を発揮します。
アクリル系の中で最も汎用性の高い商品です。
SLプライマー以外に、モルタルの混入用途として耐水性、耐久性、耐アルカリ性などの性能面でも十分信頼いただける商品です。
カチオン系のアクリル樹脂エマルジョンです。
モルタル混入用途、吸水調整にも幅広くご使用いただける商品です。
各種下地の吸水調整機能および下地への接着力増強性能を備えたアクリル系水性シーラーです。
ハネダ化学のショートフィラーシステムの専用プライマーとして高い性能を発揮します。
●シーラー(sealer)は・・・
シールする(seal)という意味で、下地と表面に塗る材料の密着性を高めます。
吸水のある下地(素材)に塗料やモルタルなどを塗る際、下地に水分が吸い込まれないように調整することで、硬化不良(ドライアウト)や接着不良を防ぎます。
主に吸水のあるものに使用し、下地を強化する役割もあります。
また、セメントモルタルの吸水調整をシーラーと表現することもあります。
●プライマー(primer)は・・・
はじめに塗る下塗り材という意味で使われています。
そのほかにも色々な目的や用途にあった機能性プライマー(防錆プライマー、粘着プライマー、浸透性プライマーなど・・・)もあります。
●フィラー(filler)は・・・
埋める、詰めるという意味で使われています。
小さな凹凸のある下地などに塗料やモルタルを塗る際、平らにするための下地調整材として使われます。
プライマー・シーラー・接着剤特集
モルタル接着増強剤による吸水調整が普及する前は、下地コンクリートにたっぷりの水打ち(刷毛などで水を湿らすこと)をしてからモルタルを塗って、ドライアウト(硬化不良)を防ぐ方法を行っていました。
現在も状況によってはその方法を推奨している場合もありますが、時代によるモルタル塗り基準の変動や、薄塗り工法の需要が増えたことにより、モルタル接着増強剤による吸水調整を行うことが一般的となりました。
また、現代の建設現場など人が密集した現場で水を撒くことが困難になっているのだと思われます。
今回はモルタル接着増強剤の吸水調整剤についてまとめましたがいかがでしたか?
街建では種類豊富なモルタル接着増強剤を取り扱っていますので是非チェックして見てください。