不定期連載街建コラム

モルタルとは?モルタルの作り方や用途、特徴について《第36回 街建コラム》

皆さんは「モルタル」について詳しくご存じですか?
わたしもこの仕事と関わる前はモルタルと言われても正直よくわかりませんでした。
街中で見かけるコンクリートミキサー車を見て、何となくコンクリートは家や建物を作るもの(セメントの材料)と想像出来ますが、モルタルって言われると実際は、なに?と思われている方も、なかにはいらっしゃるのではないでしょうか?
そこで今回のテーマ「モルタルとは」についてまとめてみました。

「モルタルとは」一般的なモルタルについて

このコラムの目次...

モルタルとは

一般的なモルタルとは普通セメント(ポルトランドセメント)に、砂(細骨材)を加えて水で練り合わせたもの。 これをセメントモルタル、または、プレーンモルタルといいます。
ちなみに、コンクリートはセメント、砂(細骨材)、砂利(粗骨材)を水で練り合わせたもの。

「《第24回 街建コラム》セメント、モルタル、コンクリートについて」でも説明してるので、ご参考にどうぞ

セメントモルタル以外では、石灰(石灰モルタル)や石膏(石膏プラスターモルタル)を使ったモルタルもありますが、今回は一般的なセメントモルタル(以下、モルタルで省略)についての基礎的な内容をご紹介します。

モルタルのイメージ画像

モルタルに入れる砂(細骨材)は川砂、山砂など、地域によって様々ですが、砂の産地や種類により色や性質などが異なり、モルタルの仕上げ方によっては、砂の粗さ(大きさ)で多少仕上りの表情が変わります。
モルタルに使う砂は、荒目(5mm以下)・中目(3mm以下)・細目(0.6mm以下)に分かれ、左官仕上げなどをするときは、ふるい砂(砂をふるいにかけて細かくしたもの)を使用する場合があります。

モルタルの用途

モルタルは主に床や壁、天井などに塗ります。厚みを調整するものとして、コンクリートの補修や仕上げ、接着用途としてタイル、石材の貼り付け、煉瓦(れんが)、コンクリートブロック積みなどにも使われます。
また、木造住宅の外壁として、木摺り(きずり)や合板(ごうはん)に防水紙(アスファルトフェルト)や透湿、防水シートを用い、ラスを張った上にモルタルを塗付ける、ラスモルタルとしても使用されています。
※現在は製造工場で既に調合をすませ製品化させた既調合(プレミックス品)の軽量モルタルなどが多く採用されています。

モルタルの主な使用箇所

  • [補修用途]

    コンクリートやモルタルの欠け部分の補修、隙間の穴埋め、ひび割れ(クラック)の補修、段差の調整など

  • [仕上げ用途]

    土間、通路、スロープ(床)の素地(露出)仕上げ、階段の仕上げ、基礎の幅木部分の保護、門や塀の天端仕上げなど

  • [接着用途]

    タイル貼り(陶磁器、セラミックタイルなど)、石材貼り、煉瓦積み、コンクリートブロック積み ※それぞれ目地に詰める用途としても使用します。

  • [下地調整]

    ペンキ・塗装下地、防水下地、タイル下地、ブロック塀の下地など、あらゆる仕上げの下地作りとして使用します。

モルタルのイメージ画像

モルタルの特徴

セメント、砂を用い、無機質であるため耐火性に優れ、不燃性で有毒ガスが発生しません。
鏝(コテ)などで平らな面に仕上げたり、パターン模様をつけることができて、自由度が高く下地作りや仕上げの調整が可能です。

モルタルの配合

モルタルはセメントと砂を重量比にして1:2から1:3の割合で配合されることが多く、配合により1:2(いちに)モルタル、1:3(いちさん)モルタルといわれています。

現場調合モルタル

配合図

(例)1:3モルタルの配合はセメントを1とした場合の重量(質量)比で

セメント:砂:水 = 1:3:0.5

モルタルなどは、現場で大量に使う場面があります。
1㎥(立米)分のモルタルを用意する場合、どのくらいセメントや砂、水が必要になるでしょうか。
1㎥(立米)=1,000Lですので、配合した後に1,000Lになるよう計算しなければいけません。

答えを見てみましょう。

上記の配合で1㎥(立米)に必要なセメント量は530kgで、砂は3倍の1,590kg(約1.05㎥)、水は0.5倍の265kgになります。

※実際はセメントと砂の配合等が異なる場合がありますのであくまでも目安としてください。また砂に含んでいる水分量により水の添加量が異なります。

モルタルの作り方

普通セメント(ポルトランドセメント)に砂を加えて水で練ります。
予め、容器にセメントと砂をよく空合わせをしてから、水を少しずつ入れて練る硬さを調整してください。

普通セメントイメージ
※イメージ画像です

一度に水を入れすぎるとモルタルが柔らかすぎて、あとで調整することが難しいので水は少しずつ入れるよう十分に注意してください。

モルタルイメージ
※イメージ画像です

既調合モルタル(プレミックス品)

モルタルを配合する手間を省きたい場合は、予めセメントと砂が調合されている既調合モルタル(プレミックス品)があります。水だけを混ぜて練れば比較的簡単にモルタルを作ることが出来るので参考にしてください。

こちらの既調合モルタルは一般的なモルタルとしてのご使用になります。そのほか、既調合モルタルには様々な機能や用途に応じてたくさんの種類があります。
※街建で取り扱いの「機能性モルタル(下地材)」をご参照ください。

モルタル作りに必要な道具(道具紹介・プラ舟・鍬・こて・モルタルミキサーなど…)

モルタルを作るときは、練る量により容器や道具の選択が必要です。ここでは一般的な道具を紹介します。

道具イメージ
※イメージ画像です

モルタルを練るときはプラ舟と鍬(クワ)など(角スコップでも良い)があると便利です。
プラ舟のサイズは大きいものから小さいものまで様々あります。
少ない量のモルタルを練る時はバケツとヒシャク、レンガ鏝などがあれば便利です。
塗付ける道具として必要なコテや、壁を塗る際に練ったモルタル(ネタ)を手元に置くコテ板も必需品です。

※そのほかモルタルを正確に練るために必要な計量器や軽量カップ、汚れ防止などに必要なシート・養生類などもご用意してください。
セメントはアルカリ成分が強いので、施工の際はゴム手袋などの使用をお勧めします。
モルタルを大量に練るときはモルタルミキサーがありますが、プロの職人さんも使用している比較的大きい機械になります。

※モルタルミキサーを詳しく知りたい方は「《第4回 街建コラム》のモルタルミキサー特集前編」よりご参照ください。
モルタルミキサーの代わりとして大きいバケツや練ダル、ハンドミキサー(かくはん機)などがありますので是非参考にしてください。

モルタルミキサーイメージ

モルタル混和剤(接着増強剤・メトローズ・着色顔料など)

モルタルは様々な機能や使用用途に応じて入れる混和剤があります。
一般的な混和剤としてモルタル接着増強剤、防水材、メトローズ(メチルセルロースもしくはMCとも呼ばれる)など、多数ありますので一部の商品をご紹介します。

モルタル接着増強剤

セメントモルタル、既調合モルタル(プレミックス品)へ定められた規定量の樹脂(セメント量に対して5%程度)を混入することで、ポリマーセメントモルタル(樹脂モルタル)としてご使用できます。

混入の場合はモルタルの接着力を高め、強度や性能の向上にも役立ちます。また、下地のコンクリートなどへ吸水調整(シーラー)として使用する場合があります。

下地へ塗布することにより、モルタルに必要な水分が下地へ急激に吸収されないよう「吸い込みを抑制」させます。
そうすることでモルタルの硬化不良(ドライアウト)防止や、下地との接着性能を良くします。

モルタル用防水材

セメント粒子に防水性を与えて吸水性を減少させる混和型防水剤です。
セメント量の2〜5%の添加量により、水を通しにくくした簡易的な防水モルタルとしてご使用出来ます。
主にベランダやサッシ詰めなどのモルタルとして使用しています。

メトローズ(モルタル保水材・作業性改良材)

メトローズはメチルセルロース(MC)と呼ばれ、パルプ繊維を原料とし化学処理を加えたセルロース系水溶性高分子です。

モルタルに混ぜるだけでコテ伸びが良くなり、塗りやすくなります。また、保水性も上がりドライアウトやひび割れの抑制にもなり、適度な粘度が加わるため下地への付着力も向上します。

ひび割れ抑制材(繊維)

代表的なものとしてタフバインダーがあり、モルタルや漆喰などに混入すると繊維のつなぎ効果やひび割れ抑制効果があります。
また、ナイロン繊維自体の保水性によりドライアウトの抑制やコテ滑りが良くなります。

セメント・プラスター着色材

セメントなど混入する粉末の着色顔料です。種類は無機顔料と、一部無機質・有機質顔料との混合体の2タイプあります。カラーバリエーションも豊富にあります。

関連特集・コラム

まとめ

今回はモルタルについてまとめましたがいかがでしたか?
基礎的なモルタルの知識で必要な現場配合や、道具、材料など紹介しましたが、街建では建材においての詳しい知識や情報など、過去のコラムでも多く取り上げています。皆様にも何かお役に立てられる情報があれば良いと思っておりますので、興味がある方は是非一度チェックして見てください。
これからも街建プロを宜しくお願いします。

参考資料

  • リス興業株式会社(プラ舟・バケツ・練りダル等カタログ)

  • 日本化成株式会社(NSハイフレックスカタログ)

  • 信越化学工業株式会社(hiメトローズカタログ)

  • 株式会社マノール(マノール防水剤カタログ)

  • 東レ(タフバインダーカタログ)

  • 株式会社ヤブ原(マインカタログ)

  • 株式会社ヤブ原 ウォールNo.24号