時計やスマートフォンなど今では当たり前のように防水機能が付いています。
防水シューズなんかは雨の日に大活躍だったりします。
しかし施工例などの撮影で使用している私物の一眼レフには防滴は付いていますが、防水機能はありません。
というかほぼすべての一眼レフカメラや一眼ミラーレスカメラは防水に対応していないんですよね。
ですので、雨天時の撮影は勘弁してもらいたいところです。ということで、今回のテーマは「防水」です。
《目次》このコラムの内容は...
防水と言っても範囲が広いので建築関係ではよく名前が上がる「防水モルタル」について解説していきます。
厳密に言うと組成によって分類が異なるのですが、今回はざっくりと分けると、モルタルには、セメントで作る「セメントモルタル」、消石灰の「石灰モルタル」、石膏の「石膏プラスター」など原材料によって名称が異なるモルタルがあります。
防水モルタルも原材料が違うのかといったらそうではありません。防水モルタルの立ち位置は少し違います。
防水モルタルとは、上記のセメントモルタルに防水用混和剤を添加して防水性能をあげた機能性モルタルのことを言います。
機能性モルタルには、防水モルタルの他、収縮低減剤などを添加した「無収縮モルタル」、砂などの骨材の代わりにパーライトなどの軽量骨材を使い重量を軽くした「軽量モルタル」、セメントモルタルにポリマーを配合した「ポリマーセメントモルタル」、樹脂(レジン)を配合した「樹脂モルタル」などそれぞれ混和剤を混入して機能を持たせたモルタルなどがあります。
モルタルとコンクリートの違いは「《第24回 街建コラム》セメント、モルタル、コンクリートについて」をご覧ください。
防水モルタルは上で説明した通り、セメントモルタル等に防水用混和剤を添加して簡易的に防水性能を高めたモルタルです。
しかし名前に「防水」と付いているからといって、水分を完全に通さないわけではありません。
そのため屋上やバルコニーなど雨漏り対策が必要な現場で施工する場合は、防水モルタルの上に防水塗装を行うことが一般的な方法となっています。
防水工事は大きく分けて、
の3種類があります。
モルタル防水とは、塗膜防水工事の一つで、防水モルタルを使って施工した防水工事のことを言います。
防水モルタル…
モルタルに防水用混和剤を添加した防水機能を持つモルタル
モルタル防水…
防水モルタルを使って防水工事を行う施工方法
屋外の壁、基礎、地下室の壁や床、浴室やプール、屋上、受水槽や防火水槽、地下トンネルや河川やダムの修復など様々な箇所に使われています。
モルタルやコンクリートは内部がアルカリ性なので、コンクリート中の鋼材が錆びにくく永久的なものと考える方が一般的です。
しかし、一般的なモルタルは目に見えないくらいの小さい穴が多数あいています。
この小さい穴から大気中の「炭酸ガス」や「雨水」がモルタルやコンクリートの中に染み込んでいき、コンクリート内にある「水酸化カルシウム」が水分によって溶け出し、さらに炭酸ガスと反応して「炭酸カルシウム」に変化します。
そうやってできた「炭酸カルシウム」は、鉄・木材等を腐蝕・腐朽させ、白華や膨れの原因となりモルタルやコンクリートを劣化させます。
上でも書いた通り、一般的なモルタルは目に見えないくらいの小さい穴が多数あいています。
この穴を塞ぐことで内部への水の侵入を防ぐことで防水性を高めたものが防水モルタルです。
防水材の種類によって原理は異なりますが、ここでは高級脂肪酸系の防水材の場合で説明します。
高級脂肪酸系防水材の主成分は「脂肪酸アルミニウム」。そして脂肪酸アルミニウムがモルタルやコンクリートの劣化の原因となる「水酸化カルシウム」と化学的に結合し、「脂肪酸カルシウム」と「アルミン酸カルシウム」が生成されます。
脂肪酸カルシウムは撥水性が強く、アルミン酸カルシウムはセメントと粒子の隙間に入って目を緻密にして穴を少なくすることで、防水効果を高め、持続させることが可能になります。
一般的なモルタル…
防水モルタルに比べて材料代は安いが、耐久性に劣る
防水モルタル…
一般的なモルタルに比べて材料代は高くなるが、耐久性が高い
モルタルにはクラックや浮きの発生がつきものです。外壁に施工した防水モルタルも同様です。
放っておくと、そこから雨などの水が染み込み壁の内部をダメにしてしまいます。早めに施工業者などに確認してもらうのをオススメします。
国内で使用されている防水材は非常に多くの種類がありますが、大きく分けて「無機質系」、「有機質系」、「混合系」に分けることができます。
中でも多く使用されているのは、「塩化カルシウム系」、「ケイ酸ソーダ(水ガラス)系」、「シリカ(ケイ酸)質系」、「高級脂肪酸塩(金属セッケン)系」、「ポリマーディスパージョン系」です。
街建に掲載している防水材の一部を紹介します。
ウォータイト B号モルタル用は、特殊無機化合物を主成分とし、防水性、水密性を一段と向上させ、モルタル防水、躯体防水などに優れた効果を発揮する、信頼度の高いセメント混入型の防水剤です。
パウダックス防水は、特殊成分がコンクリート内部に浸透し水に溶けない結晶を生成、躯体表層部の毛細管の空膜を充填して微密化することによって防水効果を発揮します。JASS 8T-301タイプ(C-UI)適合品です。
セレガードDSは、浸透性に優れる特殊活性剤がコンクリート躯体内部の遊離石灰と反応して、安定した結晶体をつくり、コンクリートを緻密にして防水をするケイ酸質系の塗布防水材です。JASS 8(日本建築学会建築工事仕様書・同解説・防水工事・防水機構)T-301規格適合の製品です。
防水モルタルとはちょっと違いますが、降った雨を1箇所に集めて排水することで外壁や基礎を雨水の侵食から保護することができる雨樋が壊れた時に簡単に補修できる商品があります。
もちろん雨樋には雨水が流れるので防水性が必要です。
ファストフラッシュ グレー 280mm×5m×2.3mm厚/箱
ファストフラッシュは、紫外線に強く、露出可能で水を漏らさない補修シートです。
壁際の水切りや雨漏りの補修、板金の補修、煙突やトップライト廻り、雨樋や配水管の補修に役立ちます。
FlashSeal(フラッシュシール) グレー 750ml/缶
FlashSeal(フラッシュシール) グレー 750ml/缶は、液状のエチレンプロピレンジレンゴム(EPDM)なので、直接塗るだけで様々な形状に対応する万能防水補修塗料です。
紫外線に強く、雨といの補修、U字溝のジョイント補修、ファストフラッシュの端部、防水層の亀裂などの施工に適しています。
ご紹介した商品は簡単に補修・修理ができそうですが、これらは高所での作業になります。転落事故に繋がる大変危険な作業なので、できれば専門の施工業者へ依頼をオススメいたします。どうしてもご自身でという場合は、ヘルメット・フルハーネスなど安全帯の着用をお願い致します。
今回は、防水について解説しました。
街建ならではの目線で防水材料をさらに深掘りしたり、モルタル工事の種類の紹介などまで広げたかったのですが、話し出すと朝までかかりそうなので、このくらいにしておきますね。