街建ではモルタルやセメントなど建築物に必要な商品を取り扱っています。
今回は初心に帰って「無収縮モルタル」をテーマに取り上げたいと思います。
一般的なモルタルは普通セメントに砂、水などを混ぜ合わせて作ります。
このモルタルは「水分の乾燥によって収縮する(乾燥収縮)」という性質を持っており、これは水を使用している以上避けられない性質です。
乾燥収縮はモルタルの表面が歪んだり、ひび割れ(ヘアクラック)の原因になっているのです。
そこで、収縮によって起こるひび割れを改善しよう!と開発されたモルタルが無収縮モルタルです。
《目次》このコラムの内容は...
無収縮モルタルは、きわめて収縮率が低い性質を持たせたモルタルです。
※無収縮の性能を発揮できるのは、あくまで密閉されて水分がなるべく蒸発しないような環境下で硬化した場合です。
先述したように、一般的なモルタルは普通セメントに砂、水などを混ぜ合わせて作りますが、無収縮モルタルは一般的なモルタルに膨張材を加えることで収縮を抑え、亀裂やひび割れしにくいのが特長です。
このことから無収縮モルタルは膨張モルタルとも呼ばれています。
〜日本での膨張材の歴史〜
1960年〜1970年代の半ばまでにセメント各社が相次いで膨張材を開発し、1980年に品質規格JIS A 6202「コンクリート用膨張材」が制定されました。
無収縮モルタルは大きく分けて「グラウト」と「パッド」の2種類があります。
流動性が高いので、隙間や空洞などへ流し込むと隙間なく充てんでき、構造物の補強に適しています。
パッドは成形性に優れています。
固練りで使用し、通常のモルタルのようにコテを使用して施工できます。
無収縮モルタルの特長としては「強度が持続しやすい」、「付着性が高い」、「高温、低温環境においての品質保持」、「施工性が良い」があります。
無収縮モルタルは、施工後の収縮がほとんどありません。
最初の型さえ丁寧に使っておけば、そのままの形状でしっかりと固まります。
施工後の強度を保ちやすいため、強度が必要な箇所への施工に最適です。
ブリーディング現象がないので、沈下や収縮を防ぎ、構造物との付着性を高めることができます。
ブリーディング現象とは、施工後のモルタルやコンクリートの表面に水が浮き上がってしまう現象のことです。
硬化後は高温および低温など、厳しい環境下でも品質が低下しにくい材料です。
また、隙間のない仕上げを実現できるため、劣化の原因となる雨水などの侵入も起こりにくく、長寿命化が期待できます。
グラウトは流動性に優れているため、隙間なく注入や充てんができます。
パッドは固練りで通常のモルタルのようにコテを使用して成形できます。
これだけの性能が揃っていると、それなら全面的に無収縮モルタルを使えば良いのでは?と思ってしまいますよね。残念ながら現実的な理由で非常に難しいのです…。
高性能な無収縮モルタルのデメリットは、値段が高価なところにあります。
そのため部分的に使用されることが多い材料なのです。
無収縮モルタルは部分的に使用されることが多いとお話しましたが、実際にはどんなところに使用されているのでしょうか。
鉄骨の柱脚部のベースプレートと基礎をアンカーボルトで固定しますが、さらに強固にするため柱脚部のベースプレートと基礎の接合部分に無収縮モルタルを注入します。
【使用例(NSグラウト)】
@規定量の清水に日本化成株式会社のNSグラウトを投入し、攪拌機を使用して攪拌
AJロート試験(コンテステンシー試験)で流動性を確認
B接合部分へ流し込み
無収縮モルタルは、コンクリート造の建物の耐震補強工事にも使用されます。
鉄骨柱と基礎との接合と同様に、コンクリートと補強材となる鉄骨ブレースと呼ばれる補強材などとを固定するアンカー部分に、無収縮モルタルが使われます。
補強材を強く固定することによって建物の耐震強度を高めることが可能です。
劣化によって発生したコンクリートのひび割れ部分などに充てんして使用します。
細かい隙間やひび割れを補修でき、雨などの水分の侵入を防ぐことにも繋がります。
そのため、耐水性が求められる場所の施工にも使用されます。
無収縮モルタルは隙間のない仕上りができるので、ダムや橋などの耐水性を高めたい構造物の補修や施工にも使用されています。
成形性に優れたパッドタイプは、鉄骨柱の土台としても使用されています。
【使用例(NSグラウトP)】
固練りになるよう清水と混ぜ合わせ、コテで塗り付け
無収縮モルタルは様々なメーカーが取り扱っていますが、街建では日本化成株式会社のNSグラウトシリーズが人気です。
▽その他の街建で取り扱っている無収縮モルタル
プレミックス型のセメント系無収縮モルタルです。
優れた流動性を発揮しますので、間隙をスムーズに充てんすることができ、作業性・成形性に優れます。
初期強度が高く早強性を有するとともに、長期的にも安定した強度発現性が得られます。
プレミックス型のパッド用セメント系無収縮モルタルです。
パッド等の成型、非流動性を求められる箇所への施工性に優れます。
機械設備、鉄骨柱など高精度の据付工事に最適です。
街建では無収縮モルタルとしてハイジャスターも取り扱っています。
アクセスが非常に多く、人気の高い商品ですので合わせてご紹介いたします。
ハイジャスターは、マンホール鉄蓋の基礎調整部施工専用として開発した速硬型高流動性無収縮モルタルです。
AJフレームホルダとのセットで鉄蓋の安全性能を長期にわたって確保できる製品です。
ハイジャスターを使用する工法として「グランドマンホールの基礎調整部施工システム」があります。
マンホールの鉄蓋をマンホール(下枡)に設置する代表的な工法です。
まずは下の図をご覧ください。
鉄蓋を支えるグランドマンホールと地中に埋まっているアンダーグランドマンホールの接点である「基礎調整部」は、グランドマンホールを支える基礎的な役割があります。
その基礎調整部の施工が不十分な場合、蓋のガタツキ、周辺舗装のクラック、さらには道路舗装面を突き破り、基礎調整部の受枠ごと飛散するといった事故につながることもあります。
安全性の確保のため、確実な基礎調整部の施工が必要になります。
「グランドマンホールの基礎調整部施工システム」と呼ばれているハイジャスター工法では、この基礎調整部の重要性に着眼しています。
施工においては、「ハイジャスター」と「AJフレームホルダ・ボルト緊結セット」を用いた実績豊富、かつスピーディなシステムです。
街建では、ハイジャスターが複数袋まとまったお得なセット商品もございます。
今回は無収縮モルタルについてご紹介いたしました。
メリットの多い材料ですが、通常のモルタルと比較すると高価な商品なので部分的な箇所や必要箇所にのみ施工するのが一般的です。
DIYなどで無収縮モルタルを使用される場合には、全て無収縮モルタルにするとコストがかかってしまいますので、通常モルタルと無収縮モルタルとで使用箇所を選定することをオススメします。
モルタルについては
・《第24回 街建コラム》セメント、モルタル、コンクリートについて
・《第36回 街建コラム》モルタルとは?モルタルの作り方や用途、特徴について
でも説明していますので、詳しくはそちらをご覧ください。