カラーコンクリートって聞いたことありますか?
土木工事などでは茶色や黒などの色がついたコンクリートが景観に合わせて使われています。
身近なところでは、公園でよく見かけるタコの滑り台なんかもカラーコンクリートが使われています。
でもチョット待って。コンクリートの材料であるセメントの色は、グレーが一般的ですよね。
どうやって色を付けているのでしょうか?最初から茶色や黒色のセメントがあるのでしょうか?
...と思って調べてみました。
セメント着色剤を調合してカラーセメントにしているものはありましたが、最初からセメント自体に色の付いたモノは見つけることはできませんでした。
ということで今回のテーマは「セメント着色剤」です。
《目次》このコラムの内容は...
セメント着色剤とは、セメントなどに混入し、モルタルやコンクリートを着色するための顔料です。
セメント以外にも石灰、プラスターの着色にも使用ができます。
顔料とは、色を付けるための粉体で、水や油には溶けないものの総称です。水や油に溶ける着色目的の物質は染料と呼ばれています。
建築・建設分野で使用されている顔料は、主に無機質顔料と呼ばれる天然鉱物を粉砕したものがほとんどで、有機質顔料は一部の着色剤で使用されている程度です。
※画像はイメージです。
日本国内ではセメント着色剤に以下のようなものが使われてきました。
色が付いた粘土質の土で、聚楽土、稲荷山黄土、京錆土、深草土などが有名です。有名な左官職人さんは色土を求めて海外にまで足を運ぶという話を伺ったことがあります。
※画像はイメージです。
酸化鉄赤とも言われ、土の中の鉄が酸化した酸化第二鉄を主成分にした赤色の顔料です。江戸時代にインドのベンガル地方産を輸入したことで「べんがら」と呼ばれるようになりました。
松など燃やして作った煤(すす)で黒色の着色剤です。近年ではカーボンブラックを使った着色剤も松煙として販売されています。
※画像はイメージです。
カーボンブラックを原料とした液体状の墨です。一般的な墨汁は糊(のり)の成分が含まれているので混ざりにくく色ムラになりやすいが、左官墨は糊成分が含まれていないため、色の調整がしやすいのが特長です。
このような昔からある着色剤を使いやすく商品化したのがヤブ原の「マイン」です。
1930年(昭和5年)ドイツのフランクフルト市にあるイーゲイ染料工業株式会社(現ランクセス社)から無機顔料数10種類を輸入しこれらに「マイン」の名称をつけて着色剤として販売開始しました。
戦時中から戦後にかけて輸入が困難になりましたが、セメント・石灰・石膏などの着色に最適になるように国内の各色専門メーカーの顔料でテストを重ねて国産の着色剤を開発販売し、1952年(昭和27年)に再びイーゲイ染料工業株式会社から輸入することができるようになり、国産品と合わせてマインバイエルとして販売を再開しました。「セメントの着色と言えばマインだよね」と多くの方から支持を受けています。
マインの他にも冨士商会の「パーフェクチン」やランクセス社の「バイフェロックス」などが有名です。
一般的なセメント着色剤は、無機系の原料を独自の配合でブレンドし、セメントに混入することでベストな色が表現できるように作られています。セメント着色剤の詳細な製造工程については公表されていません。
セメント着色剤は顔料なので水に溶けることはありません。そのためセメント自体の色が変わることはありませんが、顔料をセメントに添加してシッカリと混ぜることで色が均一になっていきます。
ポルトランドセメントの色はグレーなので着色する場合は「ホワイトセメント」を使用し色を出しやすくすることが一般的です。
目の細かい珪砂を使うことで着色剤をより分散させ、色を均一にしやすくすることも昔から行われています。
黒色で着色したい場合はポルトランドセメントの方がオススメです。ホワイトセメントでも可能ですが、より高濃度の黒色顔料が必要となります。
とは言え、現時点で真っ黒に仕上げることは非常に難しく、混入限界パーセンテージまで入れても真っ黒にはなりません。必ずテストしてから施工することをオススメします。
街建に掲載されているセメント着色剤を紹介します。
マインは、セメント、漆喰、石膏プラスターなどに混入し、着色する顔料です。マインの粒子が十分に分散し、セメント、漆喰、石膏プラスターなどの粒子間に介在または付着することにより、目的の色を表現します。種類は、無機質顔料と、一部無機質・有機質顔料との混合体の2タイプ。カラーバリエーションも豊富です。
香蘭弁柄は、Fe2O3(三酸化二鉄)、紅柄、酸化鉄粉、鉄丹、鉄朱、サビ粉とも呼ばれる小豆色の顔料で、酸化鉄 80%以上、他に不溶解性の珪酸塩も含んでいます。耐候性、耐薬品性に優れているため、建材、塗料、合成樹脂、着色舗装、その他幅広い用途に使用されています。
インテグラルカラーは、生コンクリートや生モルタル着色用粉末顔料です。コンクリートミキサー車に粉体のまま投入するだけで、容易にコンクリートに着色できます。混入する量を調整することで色の濃さを変えることができます。
モルタルへの混入であればセメントの重量比5%以内がオススメされています。これは強度の問題で着色剤を多量に入れると強度を低下させる恐れとクラックの発生率が高くなるので気をつけたほうがよさそうです。
強度を必要としないモルタル壁であれば8〜15%程度でも可能とのことですが、各着色剤の着色力には限度があるので必要以上に使用するのはもったいないかもしれません。
1.あらかじめ計量しておいた「マイン」を10倍の量のセメントに入れ、カラ合わせをしてカラーセメントをつくります。
できたカラーセメントを残りのセメントに入れ、十分撹拌しよく混ぜ、50〜100メッシュ位のフルイ網に通します。
これを5回繰り返してください。このカラ合わせ作業が、色ムラのないモルタルを作る上で、最も大切なポイントとなります。
※注) セメントに、ただマインを振りかける方法は、色の出方がよくありません。
セメントにマインを振りかけるだけで水練りする場合と、上記のようにフルイ合わせをしてから水練りする場合、またフルイ合わせ回数の多少とでは、仕上りの色がはっきり異なります。フルイ合わせの回数を一定にしておけば色の安定に繋がります。
2.カラ合わせのすんだカラーセメント(マイン+セメント)に、砂または硅砂、その他の混合物を混ぜてさらにカラ合わせをします。
3.カラ合わせしたものに、水を加えて混練りします。水の量は正確に計量してください。(セメント25kgに対して水10.5L)
※注) 練り水の量が多いと、アクと色ムラの出る危険性が生じます。
セメント着色剤を使った建造物は実は身の回りにも多くあります。意識していないと気が付きにくいですが、比較的わかりやすいところで、公園の滑り台を3ヶ所ご紹介します。
すべて都内の公園ですが、取材費をケチっているわけではありませんからね(苦笑)
有楽町線辰巳駅を出ると目の前で出迎えてくれる大きなタコの滑り台。タコの吸盤をイメージしたステップが素晴らしいアイデアです。
中央区新川の中心にある越前堀児童公園には切り株をモチーフにした滑り台。滑り台の下は柔らかい素材で作られていて児童公園の名に相応しい遊具です。
通称かいじゅう公園と呼ばれ、以前は水遊び場に「かいじゅう」がいましたが、老朽化のためにリニューアル。色鮮やかでかわいい「かいじゅう」の滑り台です。まぁ「かいじゅう」というより「恐竜」のような気もしますが...。
今回は、「セメント着色剤」をテーマにしたコラムでした。
カラーコンクリートを施工するには高い品質の着色剤と専門的な技術が必要ですが、セメント着色剤を使うことで建造物に個性的な魅力を与えることができます。まだ使用したことがない建築家やデザイナーさんにはぜひチャレンジしていただけると嬉しいです。
今回紹介した公園の他にも外壁、歩道、床など様々な箇所で使用されていますので、街を歩きながら探してみてはいかがでしょうか?
※注意※
掲載した顔料はイメージ画像です。個々の色についてはお答えすることができませんので、ご了承願います。