「モルタル浮き」と言っても、ピンと来ない方もいらっしゃると思います。
モルタル浮きとは、モルタルを施工した後に下地から段々とモルタルが剥がれて浮いてしまうことです。
モルタル浮きを放置しておくと、地震などの衝撃で剝がれて落ちる危険性があります。
特にモルタル壁にひび割れが起きて浮いてしまっている場合は、車が通っている場所や人が通る可能性がある場所にモルタルが剥落し、死傷事故に繋がる恐れがあるため早急に対処しなければなりません。
今回はモルタルに浮きが出てしまったときの対処方法についてのお話です。
《目次》このコラムの内容は...
モルタルが下地(躯体コンクリート等)から剥がれている状態の事を「浮き」と言います。
原因は様々ですが、周りと比べ不自然に盛り上がっているような見た目でわかるものと、内部で起こっていて専門業者による打診検査でしかわからないものがあります。
浮きが発生している部分に大きなひび割れが起こっている場合には、モルタルを剝がして再度モルタルの塗り直しを行う必要がありますが、浮いているだけでモルタルがしっかりと躯体コンクリートに張り付いている状態であればエポキシ樹脂を注入してステンレスピンで固定する方法があります。
打診調査とは、専門道具を使用してタイルの外壁やモルタルの外壁を叩いて、伝わる感触や音の反響で浮きや剥離などの不具合を調査することをいいます。
主にモルタルやコンクリートにはテストハンマー、タイルには打診棒を使用します。
浮いている場合、叩いたときの音が違います。
音の違いを文章で説明するのは難しいのですが、タイルに浮きがあった場合は「乾いた音がする」「カラカラと鳴る」「軽くて高い音がする」など、人によって表現が異なります。
モルタルが浮いてくる主な原因は大きく分けて3つあります。
1.自然発生的な浮き
2.躯体ひび割れ等の影響による浮き
3.施工不良的な浮き
それぞれについて簡単にみてみましょう
・地震の揺れなどの天災により、建物が変形したことで発生する浮き
・外壁仕上材の経年劣化に伴う接着力の低下による浮きや、コンクリートの中性化などによるコンクリート強度の低下に伴うひび割れ、鉄筋の錆等の影響により発生した浮き
・躯体コンクリートに生じたひび割れの影響によって、躯体とモルタルとの境界に発生した浮き
※ 躯体コンクリートのひび割れは、コンクリートが乾燥することによる収縮や、地震などによる建物の揺れ、不同沈下によるものなど様々な要因で発生します
・プライマーの未施工、ドライアウト、オープンタイム、養生期間管理不足や不適切な施工により発生した浮き
このように、浮きが発生してしまう原因は様々です。
特に、モルタルを塗っている躯体コンクリートがひび割れている場合は、コンクリートの内部に雨水が侵入しないよう早急な補修工事が必要となります。
浮きへの補修工法はいくつか種類があるのですが、今回は代表的なモルタル浮きへの補修工法として「アンカーピンニングエポキシ樹脂注入工法(ピンニング)」と呼ばれている工法をご紹介します。
この工法は、浮いているモルタルにコンクリートドリルで穴をあけ、エポキシ樹脂を注入します。
その後ステンレス製のアンカーピン(ステンレスピン)を挿入し、補修用モルタル(樹脂モルタル等)で穴を埋め戻し、表面が目立たないよう仕上げ処理を行う工法です。
エポキシ樹脂とアンカーピンを併用して、躯体コンクリートと浮いてしまったモルタルを接着します。
部分的に行う場合と全面的に行う場合があります。
街建では、モルタル浮きへの補修商品も取り扱っています。
今回はヤブ原産業株式会社の『SSSボンド』をご紹介いたします。
カートリッジタイプの注入用エポキシ樹脂です。
壁面や床面のモルタル等の浮き、ひび割れ補修を行うことができます。
高粘度、中粘度、低粘度の3タイプに分かれており、補修箇所の状況に応じて使い分けることが可能です。
施工の際は別途SSSボンド専用の注入ポンプが必要になります。
浮きの注入工事が初めての方には打診ハンマーやアンカーピンなどが付属した注入スターターセットもありますので、初めての方でも安心して施工することができます。
SSS注入スターターセット(スリーエス注入スターターセット)
・SSSボンドカートリッジタイプ専用の注入ポンプです
1.カートリッジタイプなので計量ミスがなく、安定した物性が得られます
2.ワンタッチで硬化剤を主剤容器に移動できます
3.主剤と硬化剤の混練が簡単で、手を汚しません
4.カートリッジは容易に専用ポンプにセットでき、スピーディーに施工できます
5.収縮がほとんどなく、ひび割れや浮きの一体化が図れます
6.通年用なので1年を通して使用できます
壁面に発生したモルタル浮きに対して、SSSボンドを使用した補修例を見てみましょう。
まず、浮き面へハンマーを這わせて「浮き音」を確認します。
浮いている箇所は、健全な箇所に比べて高い音が確認できます。
浮き音を確認したら、浮いている範囲をチョーク等でマーキングします。
そして、この後ドリルで穿孔(せんこう)する箇所にチョーク等で印を付けます。
※浮きの箇所にばらつきがある場合は、ハンマー打診をしながらマーキングを行ってください。
今回は6mmのコンクリートドリルで穿孔し、躯体内に30mm程度の深さまでドリリングします。
ブロアーを使用して孔内の切り粉を十分に除去します。
混練りしたSSSボンドを注入ポンプにセットします。
※SSSボンドのセット手順についてはカタログ資料等をご確認ください。
注入ポンプのノズル先端に小さく切ったウエスを当て、そのまま注入孔に差し込んで、ゆっくりと注入します。
この時、ポンプは注入面に対して垂直に、底面を叩いて、しっかりと差し込みます。
壁面の場合は、SSSボンド注入後にステンレスピンを速やかに挿入します。
※この際、ピンの先端が戻らないようにすぐに別のステンレスピンを使って押し込みます
施工後、カチオンタイトによる穴埋め処理を行い完了です。
モルタル浮きの原因や対処方法についてご説明しました。
例えご自身で施工をしない場合でも、モルタル浮きへの補修施工のイメージはできましたでしょうか?
浮きを発見した場合には、打診調査やモルタル施工などの専門的な知識や技術が必要になるため、まずは専門業者へ相談することをお勧めします。
ご紹介したSSSボンドは浮き補修だけでなく、ひび割れ補修にも使用できます。
ご使用の際には必ずカタログや施工要領書をご確認ください。