街建のご利用ありがとうございます。街建の中のヒト5号です。栃木県の佐野市にある「駒形石灰工業株式会社」駒形忠晴社長に「砕石・石灰」についてインタビューいたしました。圧倒的な砕石場の大きさや、それにまつわるストーリーをお楽しみください。
──今日は駒形石灰さまの歴史、砕石・石灰にまつわるエピソードなどお聞きできればと思います。どうぞよろしくお願いします。さっそくですが、この土地で取れる石灰の特徴ってありますか?
栃木ならではの石灰岩は、石灰石とドロマイトです。つまり、ドロマイトとはマグネシウムの含有量が多く含まれている石灰岩ですね。この地域はマグネシウム(ドロマイト)が含まれている地層がある事です。そういう土地は日本でもここが一番多い所です。石灰山層の中で上から上部石灰、ドロマイト、下部石灰の三層になっています。栃木県はドロマイトと石灰の地が、馬蹄形の形の鉱床になっている。それがこの地域の大きな特徴です。
──ドロマイトは、何が石灰と違うのでしょうか。
ドロマイトプラスターという商品がありますが、マグネシウムが入ることによって、水と混ぜて壁材として塗ることができる。石灰の場合は、糊を入れなければならないのですが、ドロマイトプラスターは糊を入れずに塗れます。以前そう言ったことで、佐野市内にも日本プラスター協会がありました。
──建築材料としての出荷量はどのぐらいを占めているんですか?
出荷量のほとんどが肥料用と砕石です。後は工業用と、建材向けです。「塩焼左官用特選消石灰」と言う種類の消石灰があって、私が入社した当初(昭和63年)は、建築用が主だったのが今はだいぶ少なくなっています。
──工業用って何に使われるんですか?
工業用は中和処理向け、焼却場などの排煙脱硫、工業製品の原料素材(耐火ボードなど)として使われています。
──石灰販売業を120年以上やっておられますが、それはこの地域で石灰が取れるからですか?
そうです。栃木県の石灰の歴史は、鹿沼市「加園」ってところで慶長年間の1600年頃に石灰を採掘・加工して、宇都宮村に石灰を納めたというのが始まりだと言われている。それから栃木市鍋山町(野澤四郎衛門)の方に移って、焼成技術を高めていって、その採掘技術が佐野(毛塚磯八)へ…そして埼玉の秩父まで広がったと言われています。
──明治維新よりずっと前から産業としてはこの地にあったわけですよね。
炉で石を焼くという技術などは昔からあったのでしょうか?
昔は「谷焼窯」と言って 山の斜面を削って、薪と石灰石の層を作り、その上に土をかぶせて、下から火を入れて、登り窯のように焼成する。一週間ぐらい経った後に土をはくと石灰が焼けている。その後、山の斜面に縦長の炉を立てて徳利窯(とっくりがま)というものができる。谷焼きだと焼きあがったらその分を掻き出す処理が必要なのに対し、徳利窯は上から原料となる石灰石と石炭と塩を投入して、焼き上げ、下から焼却したものが抜き出せる様になった。生産は格段に変化し進歩て、生産性が向上して販売量を増やした。これが江戸時代の頃の話です。また、佐野市内に佐野プレミアムアウトレットがありますが、そこは昔、越名沼という大きな沼がありました。越名沼に流れ込む川を利用して船で石灰を運び込み、江戸まで運んでいたようです。その後、鉄道の時代となります。戦後にトロッコを通して、東武鉄道まで引き込み線をひいて地域全体で生産をやっていた。そして、大型トラック(ダンプトラック)へと物流も代わっていった。
──駒形石灰さんのホームページを検索するとトロッコの廃線の画像が出てきます。
うちにもまだ一輪だけトロッコが残ってるよ。
──建築材料として石灰の生産量が減ったのは売れなくなってしまったからですか?
減少しましたね。
──どうしてだと思いますか?
ハウスメーカーの台頭だと思います、工期が短期でできてしまう。それは湿式ではなく乾式なので。湿式でもやろうと思えばできるんですけどね。
──蔵や家を建てる上で湿式を使おうという話は出にくくなっていますか?
残念ながら少なくなりました。中にはいるんでしょうけど。アトピーだから塩ビ管の水道管じゃダメでステンレスにして壁は漆喰、という話は聞いたことがあります。健康な建材を使いたいという声はあります。自分たちで塗りたいという人もいて、過去に塗り方の指導をしに行ったこともありますよ。
──改めて漆喰のセールスポイントを教えてください。
私が家を建てた時に健康壁「未来」という漆喰を塗ったんだけど、その時の設計責任者の方から「漆喰は太陽や電灯の反射が違う」と言われた。壁に電灯がついた時に明治時代の洋館みたいな、部屋の壁がヒンヤリとした冷たい色感の中でも、電灯が家庭的で温か味がある、何とも言えない明るくて温かい反射光をする壁です。
──メーカーだからこそ感じる喜びを教えてください。
石灰石から形が変わって製品になった時がひとつの喜びです。こんなことができるのは石灰業くらいでしょうか?日本で自給できる唯一の資源ですね。
──御社のロゴマークにはどういった意味が込められているのでしょうか?
平成4年に創業100年を記念して作りました。イメージは卵の形をしています。卵が雛になって鳥になる成長するって事です。そして鳥が羽を広げて飛び立つように100年を経てこれから新しいものが生まれるという意味です。そこに駒形石灰工業の頭文字の英字のKを加え、Oはダブルの和になっています。それは社員の和そしてグループの和、会社と地域社会の和をイメージしています。
トーヘキの色土 タイプ:T-1B 漆喰風仕上げ 稲荷山 20kg/袋
温もりある風合いと地域ごとの土の色が活きる「土壁」の様々な色を、天然白色陶土を無機顔料で着色することで再現した内装用の壁仕上げ材です。