先日テレビ番組でカメルーンのアチュという料理を作っている場面を見ました。
スープに、水でドロドロに溶かした石灰?をドバドバって入れている場面を見てビックリ( ゚Д゚)
確かに、石灰が建築資材や運動場の白線以外にも、利用されていることは知っていましたよ。製造過程でこんにゃくやパンにも使用されていることも...。
でも、直接的に、それもあんなにドバドバと入っているとは...。
カメルーンでは、市場でゴロゴロした塊が売られていて、ものすごく生活に溶け込んでいるようでした。
番組では石灰とひとことで言っていましたが、通常石灰というのは、「生石灰」や「消石灰」の事を指します。
また日本国内で流通している石灰と番組内の石灰は異なる石のようです。
一般的に販売されている石灰で真似することは大変危険ですので絶対にしないでくださいね。
でも、石灰、タンカル、寒水粉、ラインパウダーって身近にあるのになんだか良く分からないですよね。
ということで今回は石灰について掘り下げていきます。
《目次》このコラムの内容は...
皆さんが一番耳馴染みな言葉に「タンカル」があると思います。
「タンカル」とは炭酸カルシウムの略で、石灰石を粉末状にしたり粒にしたものが「タンカル」という名称で流通しています。
簡単に言うと石灰石を砕いただけでタンカルと名称が変わるということですね。
主成分は炭酸カルシウムで、原料である石灰石は、日本で100%自給できる貴重な資源です。
また、「寒水粉」という名前を聞くことはありませんか?「寒天粉」ではありませんよ。
寒水粉とはタンカルの一種です。寒水石を粉末状にしたもので、化学式的にはどちらもCaCo3で同じものです。
炭酸カルシウムの製造工程には大きく分けて2種類で、「石灰石を粉砕・分級して製造」する方法と、「石灰石を化学反応させて製造」する方法があります。
粉砕・分級は、石灰石を砕いて篩(ふるい)をかけるだけです。砕いただけなので、成分的に安定していて、水を加えると熱を出す生石灰や、強アルカリで肌が荒れる消石灰のような危険性が無いのが特徴です。
世の中に流通している炭酸カルシウムは粉砕して製造したものがほとんどです。
化学反応させて製造した炭酸カルシウムは「合成炭酸カルシウム」と呼ばれたりします。
この合成炭酸カルシウムは炭酸カルシウム全体の1割も満たない流通量です。
合成炭酸カルシウムの製造工程は、第28回街建コラム《漆喰って何?石灰石?消石灰?生石灰?漆喰について深堀りしてみました》でも紹介したことがある消石灰までは同じです。
詳細は記載しませんが、大きな流れはこんな感じです。
まずは「石灰石」を焼成することで「生石灰」と「二酸化炭素」に分解されます。そこでできた「生石灰」に水を加えて消化させると「消石灰」ができます。
消石灰は、漆喰などの建材の他、排ガス処理、肥料、土質安定処理、食品(こんにゃくの凝固剤)、消毒などに使用されています。
「消石灰」に「二酸化炭素」を加えて「合成炭酸カルシウム」が完成です。
実は石灰石は、黒色や灰色が一般的ですが、日本の石灰石のわずか5%だけ白い石灰石が存在します。
これを白色結晶質石灰石と言いますが、この白い石灰石で作った砂のことを総称として「寒水石」と呼んでいます。
日本庭園の枯山水(かれさんすい)の庭に敷き詰められているアレですね。
民話の一つですが...
茨城県常陸太田市真弓町にある真弓山で取れる白い石がありました。
源義家が14歳の時に出陣しようとしましたが、15歳の方が勝運があると言われたため、急遽6月1日を元旦として年越しの祝いをすることになりました。
その祝いの最中に季節外れの雪が降りはじめ、これを見た源頼朝が「これは吉兆、我々の勝利は疑いなし」と決戦前の兵士達を励まし、奮い立たせて奥州征伐に向かったそうです。
兵士たちが乗る馬も勢いづき、降り積もる雪を蹴り立てて山を降りていったので、この時に馬が踏み固めた雪が大理石に変わり、寒水石と呼ばれるようになったと言われているそうです。
6月1日を元旦?踏み固めた雪が大理石に?それが寒水石?正直良くわかりませんが、いくつかの文献を見ると寒水石の名称のルーツは茨城県の真弓山にあるようですね。
今回は石灰石の利用割合の14%を占める「その他」について考えてみましょう。
運動会の季節になりました。
と言っても、近頃は時期をずらしたり、分散して開催したり・・・
熱中症やコロナ対策に、いろいろと苦労をされている学校の先生や大会関係者には、本当に頭が下がります。
さて運動会には切っても切れない白線ですが、誰もが知っているようで誰もが詳しいことは知らない物では無いでしょうか?
あの、白い粉!
あれも石灰石を細かくしたものです。チョークの原料でもあります。
(代用品として成分が同じ卵の殻や貝の殻などもあります。)
普通の水にはほとんど溶けません。化学的に合成された物のように思っている方もいるかもしれませんが長い時間を経て、自然にできた鉱物です。
食品の製造にもひろく使用されています。
数年前までは消石灰でラインを引くのが一般的でした。
しかし直接触れると炎症を起こしたり、目に入ると失明の恐れがあるなどの健康被害があり、文部科学省が安全性の高いタンカルに切り替えるよう通知を出して、切り替えがほぼほぼ終わったようです。
しかしタンカルと比較して入手の容易さや同じ重量でも量が多くより長くラインが引けるなどのメリットで消石灰に戻した施設もあると聞いていますので、使用する際は注意が必要です。
商品名 | 容量 | 製造元 | 特徴 |
---|---|---|---|
寒水粉 | 30kg | 常陸砕石稲田 | 寒水粉は、真弓産(茨城県常陸太田市)の良質な石灰石を選砿して砕いた寒水石の粉末を袋詰した製品です。 寒水粉はタンカルとも呼ばれています。 左官材や造園資材などとして幅広く使われています。 |
寒水粉 | 20kg | 旭鉱末 | 旭鉱末の寒水粉は、厳選された白色結晶質の石灰石を原料に、粉砕・粉末化し粒度調整をした石粉です。 (取り回しが容易な20kg袋になりました) |
アサヒフィールドライン | 20kg | 旭鉱末 | アサヒフィールドラインは、良質の高白色結晶質石灰石を原料としたスポーツ白線用粉末です。 眼の障害、皮膚の炎症など、健康に及ぼす影響が極めて少ない商品です。 また、ライン引きAK-01は、フィールド専用のライン引きです。 |
アサヒフィールドライン カートリッジ |
10kg | 旭鉱末 | アサヒフィールドライン カートリッジは、使用時に袋ごとラインカーへ直接差し込むことができるので、粉の飛散を抑えられ、石灰置き場をクリーンに保つことができるグランド用の白線です。 一般的なラインカーに使用することができます。 |
ラインパウダー | 20kg | 三共精粉 | ラインパウダー 20kg/袋は純度の高い炭酸カルシウムで造られているパウダーです。 一般的に使用されている消石灰と異なり刺激性がないので、安心して使えます。 従来品よりも白く、ライン用に適した粒度に調整されており、スムーズなラインが引けます。 |
タンカルライン | 20kg | 村樫石灰 | タンカルライン 20kg/袋は、スムーズなラインが引けるよう適した粒度に調整された運動競技用ラインです。 成分が炭酸カルシウムのため刺激が少なく安心です。 |
石灰質肥料を使用する目的は主に土壌を作物に適したpHにすることです。
アルカリ性である石灰質肥料を酸性土壌に施肥する事によってpHを整えることが出来ます。
土壌を適切なpHにすることで作物の育成が良くなります。
また、pHを調整することで病原菌や害虫の防除としての効果もあります。
国内で消費される飼料原料は、トウモロコシや大豆など主原料の大部分を輸入に頼っていますが、タンカルは国内で賄われています。
卵を産む鶏や乳牛などの飼料においてカルシウムは大変重要です。
しかしトウモロコシや大豆だけではカルシウムが不足するため、飼料へのタンカルの利用は効果的です。
火力発電所等の脱硫剤や、排水中和として利用されております。
工場等から排出される酸性廃水を中和するためにタンカルが利用されています。
同様に酸性泉のような自然現象に起因する酸性河川、あるいは鉱山廃水の中和にもタンカルが使われます。
このとき同時に溶解している重金属類を凝集沈殿させる効果もあります。
ごみ焼却場等で排ガス中に含まれる塩化水素(HCl)や硫黄酸化物(SOx)等の酸性ガスの除去や、火力発電所や製鉄所等の石炭を多量に燃焼させる施設では、排煙中の硫黄酸化物の除去にタンカルが使われます。
「フィラー」とは、隙間を埋める部材のこと。 埋めること自体もフィラーと呼ぶことがあります。
詰め物をすることによって平らに見せることができるようになるだけではなく、仕上げを平滑にすることができるようになります。
プラスチックや樹脂は、中にフィラーと呼ばれるミクロンサイズやナノサイズのタンカルを混ぜ合わせることで、強度や耐熱性、各種耐性を高めたり、新しい機能を持たせたり、コストを下げたりといったことが可能になります。 フィラーは充填材とも呼ばれます。
日本語の話し言葉でよく使う「ええとー」「あのー」などもフィラーって言うそうです。
何だか、感覚的にはより理解しやすいかと。目から鱗の感じです。
要る様で要らない?要らないようで要る!ものではありませんか!?
ラーメンなどの中華麺を打つときに小麦粉と混ぜて使用される「かんすい」。こちらは炭酸ナトリウムまたは炭酸カリウムなどを含む液体または粉末のアルカリ剤で、炭酸カルシウムは入っていません。間違わないように注意してくださいねって誰もそんな間違いはしませんよね。
身の回りで利用されている石灰石(寒水粉・タンカル)。
大切な資源であるとともに、大自然の恵みともいえるものですね。これからも色々なところで有効に使っていきたいですね。
ご協力いただきました、旭鉱末株式会社様ありがとうございました。