いままで何気なく通っていた道も、何かを知ってみると風景が変わって見える。そんな経験をしたことはありませんか。
今回は「都内でみかける看板建築」を探しにちょっとお散歩してきました。
大正12年におこった関東大震災の復興時、昭和初期の都市部で商店を建てる際に流行した建築様式のひとつです。
建物自体は木造町屋ですが、その建物正面を銅板やモルタル、タイルなどで覆った造りになっています。
銅板やモルタルなど燃えにくい素材を使い防火対策を図ったのと同時に、その正面部分(ファサード)は平らに立ち上がっており、さまざまな装飾が施されています。
それがまるで1枚の看板のように見えることから『看板建築』と呼ばれるようになりました。
また、屋根が隠れるように立ち上がったパラペット部分は、看板建築をみる上で注目したいもののひとつです。
「和風」、「洋風」、「丸」、「三角」、「四角」、「宮殿」や「教会」を想像させるもの、こまかなレリーフが施されているものと多種多様です。
ここは電気の世界を駆け巡ることで有名な秋葉原。
家電製品、アニメにメイド、世界に誇るクールジャパンを大集結させたこの街で見つけました看板建築。
万世橋の角を曲がり、柳森神社のほど近く、柳原通りに沿って二軒ありました。
まず一件目、こちらは『岡昌裏地ボタン店』、裏地やボタンを扱う専門店です。
外観には銅板の装飾が特徴的です。2階の雨戸をしまう戸袋には、上半分に平行四辺形の「網代(あじろ)」、下半分に六角形の「亀甲」の模様。凝ってますね。
さらに建物上部の左右には縦にひし形の模様が並びます。ずっと見てられます。
さてさてお次のもう一軒は、同じく柳原通り沿いの『海老原商店』です。
こちらはギャラリースペースとして使われている建物です。
この日は中で演劇をやっておりました。ところが私そうとは知らず…トントンとノックをし、「すいませーーん、ごめんくださーーい」、って声をかけてしまい失礼しました。
さて、建物。まず目に飛び込んでくるのは外観全体に施されたタイル。重厚な雰囲気を醸し出しています。
そのタイルにとてもマッチしている『E BI HA RA』の文字、モダンですね。
しかもこのローマ字(その下の『海老原商店』も)、ひとつひとつが立体的に作られています。書かれたものではないんですね。
屋根を隠し立ち上がったパラペット、さらに1階玄関の庇(ひさし)にも注目してください。
銅板ですね。きれいな曲線にも目を奪われますがその形だけでなく、細やかな装飾がとても凝ってます。
どうですか写真で伝わりますか。
ちょっと移動しましょうか。ここは日本橋。
メインストリートでは三越、コレド室町、日本各地のアンテナショップ、その他老舗の店舗が立ち並び、お買い物、お食事、映画鑑賞、観光などとてもとても賑やかな街。
そこからちょっとだけ奥に入りますと見つけました看板建築。
さいごに紹介するのはこちら、『カフェ・ラフレッサ』。
建物正面のモルタル、洋風なつくりがオシャレですね。
ツタの緑と2階テント、緑・ライトグリーンの縦じまがレトロ感を醸し出し、とても雰囲気があります。
さらに目を引くのが建物上部。階段状に立ち上がったパラペット。真ん中にちょこんと突き出た三角形とてっぺんの風見鶏が特徴的です。なんだかかわいいですね。
お・ま・け
「お散歩でつかれた時は甘いモノ」ということで、こちらの『カフェ・ラフレッサ』で、おやつタイムです。
すっごくひさしぶりの「ティラミス」、ピッカピカの黄色いお皿によく映えます。
さて一口…「んっ、まい!」、ココアパウダーのほんのりとした苦味と、マスカルポーネのしっとりとした甘みが心地よく、とても美味しかったです。元気がでました!
いかがでしたか。今でも東京のそこかしこに見られる『看板建築』を紹介いたしました。最後までお読みくださりありがとうございます。
今回お散歩してみた秋葉原、神田、日本橋界隈ではきらびやかなビルに囲まれたメイン通りから一本路地に入れば、まだまだ伝統や歴史を感じる風景に出会えます。
いままで何気なく通っていた道でも視線をちょっと変えてみると案外ちがった景色が見えてくるものかも知れません。
皆さんも「あっ、こんなところにこんな素敵な建物が!」等ありましたら教えてください。またお散歩で見つけた素敵な建物がありましたらご紹介させていただきます。
江戸東京たてもの園 (東京都小金井市桜町3-7-1)
岡昌裏地ボタン店 (東京都千代田区)
海老原商店 (東京都千代田区)
カフェ・ラフレッサ (東京都中央区)
江戸東京たてもの園 解説本((公財)東京都歴史文化財団)
東京のかわいい看板建築さんぽ(宮下潤也氏 著)
看板建築(荻野正和氏 監修)
左官事典(社団法人 日本左官業組合連合会)
江戸東京たてもの園 webサイト