不定期連載街建コラム

洗い出し仕上げとは?最近のトレンドに合わせた商品についてもご紹介!《第34回 街建コラム》

古民家をカフェや工房、宿泊施設などに再生し、『和』の雰囲気を見直す動きが昨今あるようです。リフォームやリノベーションとして雑誌やテレビでとりあげられている姿も目にします。
故(ふる)きを温(たず)ね新しきを知る「温故知新」。伝統に裏打ちされた『和』の風情は、古いかつてのものではなく、今や新しくお洒落でモダンなものとして捉えられているようです。

第34回の街建コラムでは、日本伝統の左官技術のひとつ、土間仕上げ工法『洗い出し仕上げ』を取り上げていきます。

このコラムの内容は...

洗い出し仕上げとは

『洗い出し仕上げ』(以下、「洗い出し」)、その多くは土間で見られる伝統的な左官仕上げの工法で、セメントモルタルの間から砂利や砕石、玉石などの種石が姿を現わしている仕上げです。
玄関先の土間部分や犬走り、門から玄関までのアプローチ、屋内の通り土間などで使われています。(種石の大きさによっては土間だけでなく、壁で使われることもあります)

「洗い出し」はその名前にあるとおり、種石を混ぜたモルタルの表面を水で洗い出し、種石の頭を出させる仕上げです。

「洗い出し」を施工する

『セメントモルタル』と砂利、砕石などの『種石』を練り合わせます。水湿しや下塗り材を塗布した下地に種石と練り合わされたそのモルタル(上塗り材)を土間に塗り付けます。
そのモルタルが完全に硬化してしまう前に、刷毛や噴霧機、吸水用スポンジなどを使いモルタルの表面部分だけを水洗いします。そうすることで種石の頭だけが土間の表面に現れます。

磯黒を使用した洗い出し
磯黒を使用した洗い出し
大磯を使用した洗い出し
大磯を使用した洗い出し

洗い出しは一般的に、仕上がった時、「種石が均一にしっかり詰まっているほうが綺麗」だとされているので、上塗り材のモルタルを鏝(コテ)で塗り付ける際には、しっかりと伏せこむことが重要です。

上塗り材の表面を洗い出すタイミングにも気を付けなければなりません。
水を使って洗い出しても種石が動かない程度に硬化しつつ、上塗り材のモルタル表面だけを洗い流せる程度の硬化具合、まさにそのタイミングで洗い出さなければなりません。

上塗り材のモルタルが硬化しすぎてしまうと、もうちょっとやそっとじゃ洗い出せません。種石の頭にモルタルがかぶったままになってしまいます。
ちなみに、いくら洗い出してもモルタルが種石にかぶったままになり、それ以上洗い出せなくなってしまった状態のことを「焼きつく」(焼きつき)といいます。

さて「洗い出し」には、先ほど紹介した『セメントモルタルと種石を練り合わせる工法』の他に、『比較的大きな玉石等の種石を、既に塗り付けたセメントモルタルが硬化する前に埋め込む工法』(手埋め工法)があります。

白馬石を使用した洗い出し
白馬石を使用した洗い出し
特選黒玉石を使用した洗い出し
特選黒玉石を使用した洗い出し

ちなみに、都内をウロウロとお散歩していましたら「砂利をモルタルと練るタイプ」の洗い出しと「玉石を埋める工法」とが一緒にみられるところがありました。風合いを見比べてみてください。

東京都渋谷区某所
東京都渋谷区某所
手前が玉石、奥が砂利を使用
手前が玉石、奥が砂利を使用

このように熟練の技が必要になる『洗い出し』ですが、最近では本来の洗い出し工法に比べ、比較的施工しやすいように製品化(パッケージング)されたものも出ています。

最近のトレンドに合わせた洗い出し

昨今の「洗い出し」へのニーズは、洗い出すタイミングの難しさを何とかしたいというもの、昨今の環境問題から現場で出す洗い水を抑えたいというもの、お洒落な店舗や建物にもマッチするもの、壁や曲面などにも比較的簡単に施工できるものなどが求められています。

そこでそれらのニーズに応えるため現代風にアレンジされた「洗い出し」には、「焼きつきにくい工夫がされているもの」、「数種類の着色されたモルタルと数多くの綺麗な種石との組合わせでバリエーションが楽しめるもの」、「昨今の環境問題に配慮し、洗い出す水(排水)を抑えて施工ようにしたもの」、「洗い出す際、種石が転びにくいようにネット状の素材に種石が貼り付けられているもの」などがあります。

街建で扱っている洗い出し製品のいくつかをご紹介します。

ブロードカラー・ストーンフィーネ

ブロードカラー(専用モルタル)の豊富なカラーバリエーションと天然石による組合せは、多彩な表現を可能にします。
ブロードカラーの特殊機能により、モルタルを「水で洗い流す」のではなく、水で湿らせたスポンジ等で「拭き取る」ことで仕上げることができるので、室内での施工や環境汚染を配慮した製品です。
玉砂利仕上げで土間専用の「NERI工法」、細粒の玉砂利を使用することで腰壁程度の垂直面にも対応できる「NERI-S工法」、天然玉石の美しさが際立つ「MAKI工法」が選べます。

<ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例>
ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例
ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例
ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例
ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例
ブロードカラー・ストーンフィーネ施工例

彩(いろどり)洗い出し

ウレタン樹脂とセメントによるハイブリッド製品です。ウレタン樹脂と骨材を練り混ぜたものを塗り付け、その硬化後にセメント系の目地詰め材カラーを塗り付け、骨材にかかる余分な目地詰め材を拭き取ります。
水洗いをすることがないので、環境にやさしく、内部でも施工可能な製品です。玉砂利と目地詰め材カラーの組合せによってさまざまなカラーバリエーションが選べます。
またこちらは2分石、3分石が選べるので種石の大きさによってその風合いを変えることもできます。

<彩洗い出しの施工例>
TX-647
TX-647を使用
TX-804
TX-804を使用
TX-604
TX-604を使用

洗い出しネット輝

300o角のネット状シートに玉石があらかじめ貼り付けられているため、土間はもちろん、壁面や曲面、階段といった複雑な場所も「洗い出し」の風合いを表現しやすい製品です。シートに均等に敷き詰められた砂利は、洗い出しの際にかたよることなく均一な美観が保てます。
あわせて洗い出しネット輝専用の『ネットワンモルタル』は、下地調整材として、ネットの貼り付け用接着材として、目地詰め用モルタルとして使用でき、とても便利です。

まだまだ他にも最近のニーズにあわせた「洗い出し」の製品があるようですが、共通して言えることは、多彩なカラーバリエーションが選べ、公園、遊歩道、伝統建築から現代建築などさまざまな現場にマッチし、施工しやすいものが好まれており、特に最近では施工環境に配慮した製品にも注目が集まっているようです。

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最後に

「温故知新」を皮切りに第34回の街建コラムをスタートしてみました。「洗い出し」は、伝統的な工法として守られているだけでなく、時代の求めに寄り添い現代風にアレンジされることで、その仕上げ(風合い)が生き続けているのだと感じました。第34回街建コラムはいかがでしたでしょうか。今後も皆さまのお役に立てるような情報を様々な角度から発信していきたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございます。
ではまた街建コラム、街建Facebookでお会いしましょう。街建の中のヒト4号でした。

参考資料

<写真協力>