版築(はんちく)の歴史は古く、万里の長城にも版築工法が使用されています。日本では法隆寺や西宮神社、龍安寺で見ることができます。
愛知県にある博物館では、土の様々な表情を感じられる建物が!?伝統的な工法についてご紹介します!
このコラムの目次...
版築の歴史は古く、中国では粒子の細かい黄土が手に入りやすかったことから多くの建造物に利用されました。
万里の長城や始皇帝陵などもこの工法でつくられたようです。
日本でも高松塚古墳や寺院の基礎などに利用されています。
昔々の話としては、材料が安い(場所によってはただ)、人の手間賃も安い(時によって協力的に)、工法もシンプルだったはずです。
よく言えばエコで再生可能で環境負荷の少ない工法です。
簡単にいうと、
工法がシンプルなだけに材料をどう調合するかは経験に左右されるところです。
主に歴史的な建造物で使われていた自然素材で垂直に近い版築の塀を作ると、倒壊の危険を軽減するために、どうしても塀がかなりの厚みになり、広い土地・材料・人手がかかります。
出来上がったものは、もちろん一度に突き固めることができないので、何層にもバームクーヘンやミルフィーユのように 横に筋が付いたようになります。
それも固く締まった後に枠を外して、やっと出来上がりの状態を確認できるという具合です。
多分大昔は意匠性などにはお構いなく、強固な壁を作ることが重要だったのでしょう。
インターネット上には実際に施工されている動画がありますが、大変な労力と想像以上に大量の土が必要なようです。
ただ「土」といっても何でもよいわけではなく 砂・砂利・粘土のバランスが重要です。
粘土分が多すぎると乾燥によってひび割れが生じやすくなります。
採れる場所によって様々な「土」は決まった材料配分がなく施工する人によって「にがり(塩化マグネシウム水溶液)や石灰・水分」などまちまちです。
土を握って形が残るくらいの水分で施工され、体積が半分くらいになるまで突き固めます。
たいへん根気がいる作業です。
また現在では、強度の面などから白セメント等も加えられています。
ほかにも、施工される方それぞれの経験を生かした配合があるようです。
ザ・ペニンシュラ東京は丸の内エリアに位置する世界最高峰ホテルです。
そのフロントデスクの版築壁は、挟土秀平氏が手掛けています。
落ち着きを感じる層の色合いはもちろんのこと、迫力あるサイズにも心惹かれてしまいます。
所在地:東京都千代田区有楽町1−8−1
法隆寺では南大門の左右に伸びる大垣と呼ばれる築地塀(ついじべい)をはじめ、各塔頭を囲む築地塀などが各々の神聖な区域をそれぞれに分けています。
築地塀の突き固められた各層は少しずつ風雨に侵され、縞模様となり、歴史的景観の一部を形作っています。
(桃山〜江戸時代 重要文化財)
所在地:奈良県生駒郡斑鳩町法隆寺山内1−1−1
菜種油を混ぜ入れ練合わせた土で作られており白砂からの照り返しを防いでいます。
まるで名画の素晴らしい額縁の様です。
所在地:京都府京都市右京区龍安寺御陵ノ下町13
7世紀の朝鮮半島での白村江の戦いに日本が援軍を出していた百済が大敗し、唐・新羅の連合軍からの防衛のために造られたといわれる山城跡です。
表大門と左右に連なる全長247mに及ぶ大練塀は重要文化財に指定されています。
所在地:兵庫県西宮市社町1−17
蓮華王院の南端に南大門に連なって築造されています。
桃山文化の影響があります。
所在地:京都市東山区三十三間堂廻り町657
外部にも内部にも土をふんだんに使い、柔らかで、荒々しく、温かみのある、土のさまざまな表情を感じることができます。
版築壁(はんちくかべ)、土間のたたき、イタリア磨き、洗い出しの床……。職人の技を駆使して造られた建物そのものが“作品”です。
INAXライブミュージアム 内
所在地:愛知県常滑市奥栄町1−130
東京都内でも、版築は見られます!
詳しくは、街建コラムをご覧ください。
黄土をつき固めた城壁(版築)であり、西側は煉瓦を積み重ねて出来ている万里の長城につながる関の中で唯一建設当時のまま残される建造物です。
土壁部分は、石灰、砂、粘土を混ぜたものと押し固めた土とで造られ、水平に渡した割竹によって、横方向が補強され堅固な城となり、大砲の砲火にさえ耐えることができました。
ブータンの伝統建築の住宅の基本のスタイルは、3階建てで1階は家畜小屋、2階は穀物倉庫、3階は住居と台所、その上は、はしごで屋根裏にあがり農作業のために使う空間として作られています。
2層の土を突き固めた版築の上に、木造の部分が建ちます。
版築という工法を調べてみて、近年自然派志向の高まりから興味を持たれる方や土そのものの温かみ、化学製品を使わない健康的な壁という印象が強い反面、施工に関しては、大変な労力と大量の材料・時間が必要になりコストがかかります。実際現代では高級旅館や特殊な施設で施工されるくらいで一般の住宅では取り入れることが難しい工法といえます。
そこで考えられたのが「版築風仕上げ」。
版築の意匠性をコテで表現することを可能にした製品がつくられています。
伝統的版築工法のように直線の積み重ねだけでなく、流れるようなデザインやアクセントをつけた、まるでアートのような壁を施工できるようです。
ただし、一層一層塗りつけていくので通常の土壁のように広い面を一気に仕上げることはできず根気も技術も必要です。
高い技術力が必要なため一般販売はされていないのが実情です。