私たちの生活の中で「省エネ」、「エコ」、特にここ最近では「自然にやさしい」、「長寿命化」、「SDGs」などをキーワードにしたトピックスが新聞やテレビ、雑誌などでよくみられるようになりました。
建築分野でも同様に、いままでの「スクラップ&ビルド」の考え方から、いかに永続的に使い続けることができるかといった考え方「長寿命化」へシフトしているようにも感じます。
そこで今回の街建コラムでは「コンクリート表面含浸材※」をテーマにしました。
まずはコンクリートをいかに長持ちさせるかを考える前に、なぜそもそもコンクリートは劣化してしまうのかをみていき、その後、コンクリートをいかに長持ち(保護)させるか、美観を保ちつづけるかの仕組み、方法(工法)について考えていきます。
※表面含浸材=「ひょうめんがんしんざい」とよみます。
《目次》このコラムの内容は...
そもそもコンクリートはどのようなことが原因で劣化をしてしまうのでしょうか?コンクリート構造物の代表的な劣化因子について少しみていきましょう。
コンクリートが炭酸ガスなどの作用によって、本来コンクリートが持っているアルカリ性を失い、中性になることをいいます。
コンクリートそのものが中性化すること自体、強度的に大きな問題はないようですが、コンクリート内部に鉄筋が通っている場合、その鉄筋が酸化し腐食する原因になり、これがコンクリートの劣化について大きな問題となります。鉄筋の腐食した箇所は膨張し、その膨張圧によってコンクリートひび割れを発生させることにつながります。
コンクリート内部の水分が凍結し氷になると、その水分(氷)の体積は膨張します。その膨張により周囲のコンクリートが圧迫されることとなります。そして凍結と融解を繰り返すことでコンクリートに亀裂が生じ、劣化へとつながっていきます。
コンクリート内部に塩化物イオンが一定量(許容量)以上存在することで、コンクリート内部の鉄筋が腐食してしまう現象です。
腐食によって生じた錆は、さきほど説明させていただいたとおり、その腐食箇所は元の体積より膨張します。その膨張がコンクリートを内部から圧迫し、ひび割れを発生させます。
コンクリート内部に塩化物イオンが存在する理由には次のようなことが考えられます。
これらの塩化物がコンクリート内部から劣化を引き起こす原因となります。
コンクリートの骨材の不安定なシリカ鉱物と、セメントとの水和反応によって生じた水酸化アルカリとが化学反応を起こし、アルカリシリケートをつくります。そのアルカシリケートは吸水膨張性をもっているため、水分を吸収し、その骨材は膨張します。その膨張によってコンクリートにひび割れが生じてしまう現象です。
まだ他にもコンクリートを劣化させる原因としては、「豆板」、「コールドジョイント」、なども挙げられますが、次はさきほどお話ししました劣化因子(劣化の原因)からコンクリートをいかに保護するかについて少しみていきます。
「街建コラム」ではコンクリートについて知りたい方はこんなコラムもご用意しております。
《第24回 街建コラム》セメント、モルタル、コンクリートについて
コンクリートの表面を保護するための工法には(おもに土木分野の話しになりますが)「コンクリート表面保護工法」があります。
コンクリートが劣化する原因となる「劣化因子」の侵入を止める工法『コンクリート表面保護工法』は、【断面修復工法】と【表面処理工法】とに分けられます。
今回テーマとしている『表面含浸材』は「表面処理工法」の内の「表面含浸工法」で使用されます。「表面含浸工法」は主にシラン系、ケイ酸塩系、その他樹脂系の材料(コンクリート表面含浸材)が使用される工法になります。
「表面処理工法」には表面含浸工法の他にも「表面被覆工法」があり、エポキシ樹脂系、ウレタン樹脂系の被覆材をコンクリート構造物表面に塗装する工法ですが、それはまた別のお話し。
コンクリート表面に含浸材を塗布することで、コンクリートの劣化の原因となる水分、塩分など(劣化因子)の浸透を防ぎ、コンクリートにさまざまな種類の保護機能を与える工法になります。
表面含浸材は、表面被覆材と比べると施工が比較的容易で工期も短期で済むと考えられています。
その表面含浸工法は先ほどお話ししましたように、さらに「シラン系表面含浸工法」、「ケイ酸塩系表面含浸工法」、「その他の表面含浸工法」に分けられます。
それではそれらの工法をひとつひとつみていきましょう。
コンクリート表面に「シラン系表面含浸材」を塗布することで成分が躯体内部に深く浸透し、コンクリート表層部に吸水防止層(撥水層)が形成されます。
その吸水防止層が形成されることで優れた吸水抑制効果を発揮し、コンクリート構造物への水の侵入を防ぐため、劣化因子となる水分、塩化物イオン等からコンクリート構造物を保護します。そうすることでコンクリートを塩害、凍害、アルカリ骨材反応などから守ります。
「ケイ酸塩系表面含浸材」を塗布することで、表面含浸材の成分とコンクリートのカルシウム分とが反応し、ケイ酸カルシウムを主体とした「C-S-Hゲル(カルシウムシリケート水和物)」が生成されます。これがコンクリートの空隙やひび割れに充填されることで表層部を緻密化し(物理的な表面改質がおこわなれ)、コンクリート外部からの劣化因子となる水分、炭酸ガスなどの浸入を抑制し、コンクリートの耐久性を向上させます。
油のような「有機樹脂系」や、コンクリートではなく鋼材腐食を抑えるために使用される「亜硝酸塩系」などがその他のものに該当します。
他にも、シランとケイ酸塩の両方の効果を兼ね備えたミックスタイプや、特殊な触媒材料が組み込まれたタイプなど、様々な種類があるようです。
さてそんなコンクリート表面含浸材ですが、もちろん街建プロでもいくつか取り扱っております。ちょっとわかりやすく『シラン系表面含浸材』と『ケイ酸塩系表面含浸材』とに分けて紹介してまいりましょう。
「アクアシール1400」は、土木用途としてスタンダードタイプのシラン・シロキサン系表面含浸材です。
コンクリート表面に塗布するだけで内部に深く浸透し、コンクリート表層部に吸水防止層を形成します。この吸水防止層がコンクリート構造物への水の侵入を抑制し、塩害、凍害、アルカリ骨材反応などの劣化要因からコンクリート構造物を保護します。
さらに外部からの水の侵入を抑制するだけではなく、躯体内部の水分を放散するため、鉄筋の腐食を抑制します。
【施工例】
その他、アクアシール1400は以下のような特長も備えております。
北日本造船叶V設桟橋(青森県)側面、床版下面に施工
(海水の飛沫に対する塩害対策)
日谷荒木トンネル(石川県)トンネル坑口に施工
(凍結防止剤の飛沫に対する塩害、凍害対策)
「バイオウォーターガードM」は、コンクリート、モルタルなどの無機質建築構造材料に塗布することにより、基材内部に深く浸透し、耐久性のある強固ない吸水防止層を形成します。
また、藻類やコケの発生を防止する機能があるため、外装面の美観維持にも優れた効果が期待できます。
「リアル・メンテ」は、複数のケイ酸塩類がコンクリートの躯体に浸透し、緻密な結晶構造を形成することで防水性、アルカリ付与、凍害・塩害の抑制効果を発揮するため、コンクリートの劣化防止、長寿命化に期待ができる塗布浸透型のコンクリート改質剤です。
その他、リアル・メンテでは以下のような特長も備えております。
第64回街建コラム『コンクリート表面含浸材について』はいかがでしたでしょうか。
昨今注目されているキーワードの「長寿命化」や「SDGs」に触れる中で、そもそもなぜコンクリートは劣化してしまうのか、それを保護するためにはどうしたらよいのかといった疑問をとおして、コンクリートの劣化因子を抑制するための材料『コンクリート表面含浸材』を紹介させていただきました。
これからも街建コラムでは商品紹介だけではなく、皆様のお役に立てそうな情報を少しずつでもお伝えできればと考えております。
それではまた街建コラム、街建Facebookでお会いしましょう。街建の中のヒト4号でした。最後までお読みいただきありがとうございました。
※商品を使用の際は、その使用前にはカタログ、取扱説明書などをよくお読みいただき安全にお使いください。