不定期連載街建コラム

1社に1台用意しておきたい。プロ向けのポータブル電源《第63回 街建コラム》

能登半島地震から7ヶ月が経過しました。(執筆時現在)
この震災以降、防災目的で個人や自治体、公的機関、企業などからも多くの問い合わせが、ポータブル電源を販売しているメーカーに入っていると聞きました。
当然、防災目的の方だけでなく、アウトドアを目的とされる方も多いのですが、最近では業務目的での問い合わせが増えているようです。
そこで今回の街建コラムでは、街建らしく建設業界のプロに向けた内容でポータブル電源について紹介したいと思います。

 
第63回街建コラムメインイメージ:1社に1台用意しておきたい。プロ向けのポータブル電源
※画像提供:京セラインダストリアルツール販売株式会社
 

《目次》このコラムの内容は...


そもそもポータブル電源とは?

多くの人がスマホの充電用モバイルバッテリーを持っていると思います。
ポータブル電源はそのモバイルバッテリーを大容量、高出力にしたものと考えておけば間違いありません。
そのためポータブル電源は、キャンプや車中泊などのアウトドアから非常時の備え、最近では建設現場などでも利用されている小型で持ち運びが可能な電源です。
ではポータブル電源ではどんなものに給電ができるのでしょうか?

スマホやノートパソコンなどの充電はもちろん、ほとんどのポータブル電源では、交流出力(AC100V)の差込口が用意されていますので様々な電子機器に利用が可能です。

想像してみてください...
家族4人で車を使ってオートキャンプ場に行きました。
このキャンプ場では騒音の問題でエンジンのかけっぱなしはNGです。
さあ焚き火の準備...と思ったら風が強くて焚き火禁止の知らせが...

そこでこのポータブル電源の登場です。
まずはコーヒーメーカーでコーヒーを入れ、子どもたちにはジューサーでバナナスムージーを作って一息つきます。

コーヒーやバナナの写真
※画像はイメージです。
 

続いて夕食のローストビーフ作り。
卓上IHコンロにスキレットをのせてお肉の塊の表面を焼く。いい匂いがしてきた。
お湯を張った鍋に耐熱の袋に入れた先程のお肉を入れて低温調理器のスイッチオン。
スキレットには残った油でコーンとソーセージ、白米を炒めてチャーハン。

お肉調理の写真
※画像はイメージです。
 

食後はポータブル冷凍庫で持ってきていた氷を電動かき氷器を使ってイチゴミルクのかき氷...。

かき氷の写真
※画像はイメージです。
 

ポータブル電源を使えば急遽焚き火ができなくてもキャンプを満喫することができるんです。
(ポータブル電源の容量によります)
いざという時のためにあると便利ですよね。
もちろん、焚き火はキャンプの醍醐味なので、それを否定するものではありません。
(直火OKの場所はあまり多くないので基本的には焚き火台を使いましょう)

話が脱線しすぎましたが、ポータブル電源の一般的な使用イメージが少しは湧いたのではないでしょうか?

ポータブル電源の歴史

ポータブル電源の歴史は、バッテリー技術の進化に密接に関わっています。
初期のニカド電池から始まり、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池と進化して、現在では次世代バッテリー技術や持続可能なエネルギーとして研究されています。

化学物質のイメージイラスト
※画像はイメージです。
 

1960年代〜1970年代:初期のバッテリー

1960年代、ニッケル・カドミウム電池(Ni-Cd。ニカド電池とも呼ばれたりします。)が利用されるようになりました。
比較的軽量で再充電が可能ということで一部のポータブル機器に使用されました。

1980年代〜1990年代:ニッケル水素電池 (Ni-MH) の登場

1980年代後半から1990年代にかけて、ニッケル水素電池 (NiMH) が登場しました。ニッケル・カドミウム電池に比べて高容量で環境にも優しい特性を持っていました。これによりポータブル機器の利用範囲が広がりました。またリチウムイオン電池の登場もこの時期です。

2000年代:リチウムイオン電池 (Li-ion) の普及

2000年代になると、リチウムイオン電池が急速に普及しました。バッテリーのエネルギー密度が大幅に向上し、より小型で高性能なポータブル電源が可能になりました。
スマートフォンやノートパソコン、デジタルカメラなど、多くの電子機器で使用されるようになり、これらの機器を充電するためのモバイルバッテリーも登場しました。
2008年ゴールゼロ社が「エスケープ150」という世界初の元祖ポータブル電源を開発・発売開始。

2010年代:ポータブル電源の多様化と高性能化

大容量ポータブル電源の登場やソーラーパネルとの連携が可能になりました。
2010年代には、キャンプやアウトドア活動、非常時の電源として利用される大容量ポータブル電源が登場しました。これらは、リチウムイオン電池の技術を利用し、スマートフォンだけでなく、ノートパソコンや小型家電まで多様な機器に対応できるようになりました。
また、環境意識の高まりとともに、ソーラーパネルと連携して使用できるポータブル電源も登場しました。これにより、太陽光を利用した持続可能な電力供給が可能となり、アウトドアや非常時においても利便性が向上しました。

2020年代:次世代技術と持続可能性

2020年代には、固体電池やリチウム硫黄電池(Li-S)などの次世代バッテリー技術が研究されています。これらは従来のリチウムイオン電池に比べて更なる高エネルギー密度を持ち、ポータブル電源のさらなる小型化と高性能化を促進する可能性があります。環境に配慮した再生可能エネルギーの利用が進む中、ポータブル電源もより環境に優しい素材や製造プロセスを採用するようになっています。

〜おまけ〜

そういえば1990年代中頃に当時私が使っていた携帯電話やノートパソコンのバッテリーはニッケル水素電池でした。
携帯電話と言っても携帯電話ではなく、PHS(通称:ピッチ)と言われるアステル東京のAJ-32のブルーベリーという端末。スケルトンでおしゃれな機種でした。PHSは移動中には使えなかったり、不便なところもありましたが、月額費用が安かったのでありがたかったです。
ノートPCは、アップル社のPowerBook540cで2つのバッテリーが同時に使用でき、4時間くらい連続駆動ができるタイプでしたが、左側のバッテリーベイにはバッテリーではなくPCカードモジュールを挿して使っていたので実質1時間ちょっとしか使えなかった記憶が...ていつの時代だって話ですよね汗

アップル社の古いノートPC

リチウムイオン電池は1970年代からさまざまな企業や大学などで研究されていましたが、1985年に旭化成工業の吉野彰氏らが基本概念を確立し1991年にソニー・エナジー・テック、1993年に旭化成工業と東芝の合弁会社であるエイ・ティーバッテリー、1994年に三洋電機で次々と商品化され2000年代に広く普及していきました。

電池のイラスト

土木・建設工事現場ではポータブル電源がオススメ

ポータブル電源がいろんな用途に使えるというのは上にも書きましたが、今ポータブル電源が注目されているのは、大容量ポータブル電源が登場したことで建設の現場でも使用されるようになったからなのです。

バッテリーの写真
※画像提供:京セラインダストリアルツール販売株式会社
 

たとえば、

  • ・現場は作業場所が頻繁に変わるので軽量で持ち運びが便利
  • ・電気がまだ通っておらず電源が使えない現場
  • ・同時に電動工具を使用してブレーカーが落ちるなど電力供給が不安定な現場
  • ・深夜の作業で騒音に気を付けたい現場
  • ・発電機が持ち込めない現場
  • ・ACコンセント以外にもUSBポートやDC電源が必要な電気工具を使う現場
  • ・ガソリン代の高騰などで少しでもコストを削減したい現場
  • ・火災や爆発のリスクを少なくしたい

などなど色々な要求に対応ができることから今ポータブル電源が注目を集めています。

街建に掲載されているポータブル電源

ポータブル電源を購入された方の感想

ポータブル電源を購入された方から感想をいただきましたので、ご紹介します。

浦上さん

電動工具での使用はまだだけど、ティファールの湯沸かし器やスマホの充電に使ったよ。
冬の寒い時に暖かいスープ作ったりして仕事よりもそっちで活躍しているよ。
それと何かあったときのために災害用として車に積んでいる。安心感が違うよね。

ワイズファクトリーさん

夜間作業時に充電式攪拌機のバッテリーを充電した。
発電機だと騒音問題に繋がることがあるので、ポータブル電源が活躍しているよ。
災害用にソーラーパネルも購入しました。

八幡工業さん

アウトドアで使用したけど、容量は十分足りているね。スマホの充電はもちろん、冬場は電気毛布で使ってるよ。操作が簡単で満足してます。

白本左官店さん

電動工具のフル充電だけ試してみたけど、操作はとても簡単だった。

おわりに

内装業を営んでいる友人にポータブル電源って知ってる?って聞いたら「現場で使ってるよ。もちろんプライベートでもね」って言ってましたが、すでに多くの方が使い始めているようですね。
とはいえまだまだ発電機OKの現場も多く、使い慣れているからということで様子見という施工会社も少なくありません。将来的にはポータブル電源でのみ利用可能な現場も増えてくるかもしれませんので1社に1台用意しておいても良いかもしれません。
もちろん仕事以外でもBBQ大会やキャンプなどで活躍するかもしれませんよ。

美味しい料理の写真
※画像はイメージです。

参考

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