建物の美観を損なうだけでなく、建物の寿命を縮める原因にもなる錆。
自宅から駅に向かう途中、久しぶりに使おうとした自転車のチェーンが錆びていて、ペダルを漕いでいるうちにズボンの裾が擦れて錆色の汚れがついてしまったこともありました。(泣)
今回の街建コラムでは、錆の原因や種類、そして効果的な錆止め・錆落とし方法についてご紹介します。錆でお悩みの方は、ぜひご覧ください。
《目次》このコラムの内容は...
錆の原因は、空気中の水分と酸素にあります。
金属表面に空気中の水分が付着すると、空気中の酸素により金属表面が酸化され、錆の発生が始まります。
<イメージ図>
金属が水に濡れるとすぐに錆びてしまうのは、水と酸素に反応しやすくなるからです。
私たちが普段目にする機会が多いのがこの「赤錆」です。
外に放置された鉄製の工具や屋根、自転車のチェーンなどが想像しやすいですね。
亜鉛メッキされた金属製のバケツや屋外の金属製フェンスなどが白っぽく変色しているのは「白錆」です。
赤錆とは異なりほとんど内部へ浸食せず、耐食性を備えているので赤錆の発生を遅らせる効果もあります。
鉄の表面を高温に加熱することで発生する酸化被膜で、中華鍋やスキレットでよく見られるのがこの「黒錆」です。
高熱を加えたり薬剤による化学反応で意図的に発生させる錆で、自然にはほとんど発生しない錆です。
黒錆に表面を覆われることで内側の錆びやすい地金を酸素や水分から守り、赤錆を抑制することができます。
青錆は緑青(ろくしょう)とも呼ばれ、10円玉や奈良の大仏などの銅像などに発生する緑色の錆のことです。
昭和前期には大変危険で毒性があるとされ、身体に害を及ぼすものとして広く認識されていましたが、その後の研究で緑青には毒性が無いという発表がなされています。
実際にはもっと多くの錆の種類がありますが、私たちの身近な錆についてご紹介しました。
白錆や青錆(緑青)は強度にはほとんど影響がないといっても、発生するとせっかくの美観を損なってしまいます。
赤錆は鉄を腐食しながら進行するので、放置しておくといずれは穴が開いたり、少し触っただけで崩れてしまう程度に強度が低くなります。
また、錆びていない金属や非金属に他の金属から発生した錆が付着して錆びてしまう「もらい錆」という現象を引き起こすこともあるので、放置しないように注意しましょう。
例)お風呂場にヘアピンやカミソリを置いたままにしていたら、金属が錆びて茶色い汚れが他にも移ってしまった
先述したように、極端な話ではありますが空気と水分があれば金属は錆びてしまいます。
「どうしても錆を防ぎたい!」という方には、錆止め剤を使用することで金属を錆から守ることができます。
錆止め剤は、金属の表面に塗布することで空気と水分が金属に直接付着しないよう皮膜を作ることで錆を防止します。
塗装による錆止めは最も頻繁に用いられる方法で、橋梁、建築物、鉄塔、各種プラント、護岸構造物、船舶、自動車、家電製品など、錆止めを塗装に頼っているものは幅広くあります。
錆を防止するのとは別の方法として、一般家庭で発生してしまった錆を取り除きたいという方には錆落としをご紹介します。
錆を落とす方法は大きく分けて2種類あります。
やすりやサンドペーパー、金属ブラシを使用して物理的に錆を削る方法です。
頑固な錆や溝が入った製品に有効ですが、製品を傷つけてしまう可能性が高いです。
赤錆にはクエン酸が効果的です。
錆汚れはアルカリ性の性質を持っているので、酸性の性質を持つクエン酸を使用すると中和反応が起こって汚れが落ちやすくなります。
水に溶いて作ったクエン酸水を、雑巾やキッチンペーパーなどに含ませて錆びた部分をしばらく覆っておきます。
その後、ブラシで擦ってから洗い流すか、たっぷりと水に濡らした雑巾でよく拭き取ります。
クエン酸だけで十分に落ちきらないときは、重曹やクレンザーで擦り落とします。
街建では、錆止め剤・錆落とし剤をお取り扱いしています。
黒サビ転換型防食プライマー剤です。
赤サビを化学反応により、錆びにくい黒サビに変化させます。
鉄・鋳物のサビ補修や塗装用プライマーとして使用できます。(※上塗り塗装は行ってください)
トタン屋根、フェンス、門扉、ベランダ、鉄骨階段、カーポート、自転車、自動車下回りなどにオススメです。
優れた防錆力、付着性を持ち、安全でつかいやすい速乾性の一液さび止め塗料です。
建築物の鉄部の錆止めはもちろん、ステンレス、アルミニウム、鉄部の各種旧塗膜にオススメです。
色目は、赤サビ、クリーム、グレー、シロ、クロの5色です。
さびに強く、乾きの速いターペン可溶1液さび止め塗料です。
工期短縮に役立つ速乾タイプで鉛を配合しない環境にやさしいさび止め塗料です。
色相は、黒さび色、赤さび色、グレー、クリーム、ホワイト(白さび色)の5色あります。
作業箇所:出入口のドア枠
使用液剤:サビパンチ
サビパンチは赤錆を化学反応により、錆びにくい黒錆に変化させます。
1.まずは現状の確認です。赤錆が広がっており表面も荒れてしまっています。
2.施工前にしっかりとケレンを行うことでサビパンチの浸透(転換)をより効果的にします。
3.サビパンチをまんべんなく塗布していきます。
4.サビパンチを塗布してから数分程度で黒化していきます。(赤錆から黒錆への転換です)
5.1回目を塗布後の状態です。
30分乾燥させた後、2回目の塗布をしていきます。(より転換の効果を高めるため2度塗りを推奨します)
6.2回目を塗布します。
7,完全に乾燥させた後、上塗りします。(そのまま上塗りが可能です)
※上塗り塗装は行ってください
画像提供:サンエスエンジニアリング株式会社
1.C-300を塗布します。
2.塗布後、ナイロンブラシでこすり洗いします。
※錆の状態により浸透時間を設けてください(30秒程度)
3.落とした錆をタオルで拭き取ります。
4.C-300使用前後の比較
5.必要な場合は塗料を塗布します。(ステンレスコート使用)
※塗料の塗布は乾燥後に行ってください
6.塗料塗布後
画像提供:サンエスエンジニアリング株式会社
今回は私たちの生活に身近な「錆」についてご紹介いたしました。
赤錆の進行を防ぐために黒錆に転換するという発想は驚きですよね。
錆について調べていると、元素記号の表現(鉄=Feなど)がたくさん出てきて「スイヘーリーベー僕の船」と教わったことを思い出して懐かしかったです。
私たちの身近な製品も様々な元素が組み合わさってできていることを考えると、より一層興味深いですね。
皆さんの家にあるもので錆びやすいものは何がありますか?
今回の記事を参考に、ぜひ錆への対策を始めてみてはいかがでしょうか。
ちなみに懐かしい繋がりで言うと、ドラゴン〇ールGTのED曲として使用されていたWANDSの「錆びついたマシンガンで今を撃ち抜こう」という曲があるのですが、久しぶりに思い出して聞いてみたりしていました。
気になった方はぜひ聞いてみてくださいね。