「レンガの建物って重厚感があってかっこいい」
ただそんな風に思っていましたが、レンガには素敵な魅力があり、種類もサイズも豊富で驚きました。
レンガはサイズによってそれぞれ名称があることをご存知でしょうか?
このコラムでは、レンガのサイズごとの名称や、レンガの歴史・建築についてご紹介します。
《目次》このコラムの内容は...
レンガ(煉瓦)とは、粘土や頁岩(けつがん)、泥を長方形の型枠に入れ焼き固めてつくられるブロック状の建築材料のひとつです。
土などの自然素材で作ることができるため、健康被害も少ない建築材料です。
レンガと似た建築材料として、タイルがありますがそれらの違いについてご存知でしょうか。
素材
レンガの主成分は土になりますが、タイルでは特定の主成分がありません。
プラスチック、セラミック、セメント、石材など様々な素材が使われています。
見た目
レンガは、粘土と砂を混ぜ合わせて作られるため、表面に凹凸があり、ざらざらしています。
また、壁や塀に使用されることが多く積み上げて使用する素材のため、厚みがあります。
タイルは、様々な素材で加工されており、インテリアとして使用できるようなデザイン性が高い材料です。
壁や床に貼り付けるタイプの素材のため、レンガと違って薄い形状をしています。
おおまかですが、工場では土や砂を使用して以下のように作られています。
ざっくりと工程を知っただけでも、なかなか時間がかかり大変な作業ですね。
次にレンガの種類についてご紹介します。
レンガの種類は、製造方法別に大まかに分けると2種類あります。
粘土を型枠に入れ固め、2〜3日ほど天日乾燥させてつくるレンガのことをいいます。
昔からある作り方で、一番シンプルな作り方です。
土を型枠に入れ、2日ほど寝かせてから乾燥させ、仕上げに高温で焼くレンガのことをいいます。
日干しレンガより手間がかかりますが、強度面に優れています。
用途別に分けると、様々な種類で分けることができます。
ここでは5種類紹介します。
一般的に使われるレンガで「赤レンガ」とも呼ばれます。
水に強いため、花壇や駐車場などに向いています。
製品にもよりますが1000℃を超えるような高温に耐えることができ、石窯や暖炉などに使われます。
セメントモルタルを使用して作られたレンガのことをいいます。
強度と吸水性が高く、外壁に使われます。
軽量で装飾に使われます。
レンガはレンガでも、使用目的に合わせて選ぶことができますね。
さらに、サイズも種類豊富なんです。
日本の普通レンガはサイズごとに呼び方があり、日本工業規格(JIS)によって寸法が定められています。
現在日本における標準寸法は「210mm×100mm×60mm」です。
耐火レンガのサイズもJIS規格が定めており「230mm×114mm×65mm」と、標準寸法の普通レンガより一回り大きいです。
また、サイズごとに呼び方もあるので、以下の表にてご紹介します。
名称 | サイズ |
---|---|
おなま | 210×100×60 |
はんぺん | 210×100×30 |
しちこぶ | 155×100×60 |
はんます | 100×100×60 |
にごうぶ | 45×100×60 |
二寸角 | 210×60×60 |
ようかん | 210×45×60 |
せんべい | 210×30×60 |
DIYではホームセンターでも売られている「おなま(標準)」と縦向きに約1/2カットした「はんます」がよく使われます。
冒頭でもお話ししましたが、私はレンガの建物を見ると「かっこいい」と感じるのですが、みなさんはいかがでしょうか?
実は、レンガ建築には外観のデザイン性の他にも、メンテナンスが少なくなるようなメリットがあります。
では、レンガ建築の魅力を5つご紹介します。
曲線にも対応ができ、また見た目の劣化も少なく年月が経つと味わい深くなります。
原材料が主に土のため、砕いて再利用できる場合もあります。環境にも人にも優しい建築材料です。
上記でもお伝えしたように、原材料が土や砂利で「有機物質」を含まないので腐食の心配がありません。
また、紫外線にも強く劣化が少ないです。そのため、耐久年数は50年以上と言われています。
レンガの内側に気泡があり、空気の壁ができています。それにより熱が伝わりにくいので、夏は涼しく冬は暖かさを保ちます。
土を焼き固めた素材であるため、炭素を含んでいないことから耐火性に優れています。
レンガの発祥は、紀元前4000年以上前頃メソポタミア文明が起こった時代だと言われています。
当時のレンガは粘土にワラ、小石などを混ぜ合わせ、型抜きをしたものを天日干しで乾燥させるものでした。
それがエジプトにも伝わり、そこから世界へ広がって行きました。
日本では、1800年代後半に入ってから、製鉄所や造船所など、火災の起きやすい建物にレンガが使われるようになったと言われています。
国内にも有名なレンガ建築がいくつかありますが、このコラムでは、街建プロの事務所付近にあるレンガ建築について3つご紹介します。
レンガ?煉瓦?みなさんはどちらをよく使いますか?そのことについて、『赤れんが近代建築 著・佐藤啓子』に載っていましたので引用させていただきます。
西洋風の「レンガ」が伝わった幕末から明治前半には「焼石」「煉化石」など様々に訳されて、やがて「煉瓦」に落ち着いた。 「煉瓦」から「レンガ」と記すようになったのは、昭和半ばくらいで、煉瓦がレトロな存在としはじめた頃「レンガ」とカタカナで表記されることが増えた。
出典:赤レンガ近代建築・佐藤 啓子
建築家 辰野金吾により設計され、1914年に完成しました。
主な特徴は、赤レンガを基調とし白い花崗岩のラインが入ったデザインで、辰野式と呼ばれています。
1945年東京大空襲により駅舎は大きな被害を受けたため、戦災復興工事を行いました。
そのまま約60年後、2007年〜2012年の改修工事により、創建当時の姿に復原されました。
この保存・復原工事では、全国から腕利きの職人さんが集まりました。なんと、ピーク時には1日におよそ1400人現場に集まったそうです。
職人さんは、現場に入ってすぐ作業に入れるわけではなく、1週間ほど練習をして、試験を受けてからようやく施工に入ることができました。
求められるレベルが高く、例えば、レンガ施工のお話だと一本のめじの幅が7.835mmのコンマ3桁まで示されたそうです。
半端な数字の理由は、昔は尺貫法のため、それで書かれた図面を現代のメートル法に直したからでした。
さらに、皇居側は2階部分まで残っているのでその保存を大前提に3階部分を加える作業は、昔の工法と今の工法をつなぎ合わせなければならなく、苦戦しました。
この工事の大変さは計り知れなく、少しでもそれを知ることで東京駅丸の内駅舎を訪れたときに、今までとは違う考え方ができそうです。
近年、東京駅周辺に高層ビルが増えていく中で、100年前と変わらない姿でたたずむ姿に魅了されますね。
創建時のレンガ数は約926万個だそうです。うち、渋沢栄一が設立した日本煉瓦製造が生産したレンガが約833万個、品川白煉瓦が生産したレンガが約94万個使用されていたそう。
「三菱一号館」は、イギリス人建築家ジョサイア・コンドルにより設計され、1894年に完成しました。
三菱が、東京・丸の内に建設した最初の洋風オフィスビル(貸事務所建築)です。
当時、館内には三菱合資会社の銀行部と、階段でつながった3階建ての棟割の物件が事務所として貸し出されていました。
建物老朽化に伴い、1968年に解体されましたが、約40年後の2010年、創建当時の姿を忠実に復元した三菱一号館美術館に生まれ変わりました。
この復元工事では、明治期の設計図や解体時の実測図の精査、写真や文献、保存部材など詳細な調査が行われました。
保存されていた部材を一部再利用したほか、意匠や部材だけではなく、その製造方法や建築技術まで可能な限り忠実に再現されました。
レンガについては、創建時の質感を復元するため型枠成形にこだわりましたが、同じように生産できる窯で実際に稼働しているところが国内には既に無かったため、中国で製造されました。外装石も手による小叩き仕上げを施すために国産の石を、中国に送り加工しました。
また、レンガ積では、全国から60人程レンガ職人を集め、試験をして実際の技量を確認した上で各職種を決め、こだわりを持ち明治時代の職人に負けない仕上げを目指して復元されました。
現在1階フロアに併設されているカフェは、当時銀行営業室として利用されており、内装がとても趣があります。
※2024年秋まで休館中です。
「復原」と「復元」の使い分けについて
一般的な辞書ではどちらも「元の状態に戻すこと」と書かれていますが、建築分野については以下のように分かれています。
復原:初めの姿が改造されたり、変化してしまったものを元の姿に戻すことをいいます。
復元:建物自体が失われ、消えてしまったものをかつての姿に新しく作ることをいいます。
ドイツ人建築家ベックマンとエンデ両氏により設計され、1895年に旧司法庁として完成しました。
1945年に戦災の被害を受け、一部形状が変更されましたが1950年までに復旧工事が行われ、その後は法務省本館として使用されました。
そして、1991年〜1994年の工事で創建当時の姿に復原されました。
復原保存といっても、大部分の資料は戦災で焼失し、創建当時の図面は24枚と大変少なく細かいところまでわからなかったそうです。
そのため復旧工事後の建物を調査し、復原に用いる材料や工法はオリジナルを尊重するとともに、コスト・耐久性を考慮して現在の技術も利用する方針でした。
調査の中で、関東大震災をも乗り越えた明治時代の様々な補強技術が発見されたそうですが、現状では基準に満たない部分もあり、補強を行い建物の強度を高め、復原していきました。
復原後の現在は、法務総合研究所や法務図書館として利用されています。
当時使用されたレンガは、東京駅丸の内駅舎でも使用されている日本煉瓦製造が生産したものです。
練り混ぜの必要がなく作業が簡単なレンガブロック用接着剤です。
耐火レンガを積み上げる際の目地材として使用します。
トランプのスペードのようなかたちをしているのものが多く、幅広な面を持っているため、モルタルを使う作業に適しています。
モルタルをかきまぜたり、すくったり、塗ったり、平にする作業ができます。
いかがでしたか?
今回のコラムでは、レンガとは?から、種類や名称、魅力、建築物など、レンガについて幅広い内容でご紹介させていただきました。
国内には様々なレンガ建築があるので、訪問先にあれば注目してみてはいかがでしょうか。