建築現場で何かと便利で使用することの多い「はしご」、「脚立」、「足場台」ですが、みなさんはこれらの使用中に『ヒヤリハット』した経験はありませんか。
今回の第56回街建コラムでは、普段、日常的に使用する「はしご」、「脚立」、「足場台」の安全な使い方に注目し、街建プロで取り扱っている商品を紹介しながら、<安全に使う 「はしご」、「脚立」、「足場台」>をテーマに進めていきたいと思います。
《目次》このコラムの内容は...
…っとその前に突然ですが、2023年10月に労働安全衛生規則が改正され、「昇降設備の設置」および「保護帽(ヘルメット)の着用」が必要な貨物自動車の範囲が拡大されるということはご存じでしょうか。これまで荷役作業時に昇降設備の設置および保護帽の着用が義務付けられていた車両は『最大5t以上の貨物自動車』が対象となっておりましたが、新たに最大積載量2t以上5t未満の貨物自動車も加わりました。この改正ではその他にも『テールゲートリフターを使用して荷を積み下す作業への特別教育の義務化』、『運転位置から離れる場合の措置について』等もございますが、今回の街建コラムでは特にその「昇降設備の設置」について触れていきたいと思います。
そもそもこの「昇降設備の設置」を対象にした貨物自動車範囲拡大の目的は、労働災害の防止です。近年、陸上貨物運送事業(陸運業)では労働災害が増加傾向にあるそうです。その多くは荷主、配送先等で荷役作業時に発生している労働災害と言われ、それらを防止するためとしています。
▲ウィング車
▲平ボディ
※画像はイメージです。
陸運業の死傷災害の内、最も多いものは「墜落転落災害」。最大積載量5t以上のトラックからの災害発生が約5割、最大積載量2t以上5t未満のトラックからの災害発生が約4割となっているそうです。
車両の種類別にみると、「平ボディ」、「ウイング車」で約5割を占めており、側面が開放できる構造のもので多く発生していることが判っています。
「厚生労働省・都道府県労働局・労働基準監督署」の資料によりますと、その「昇降設備」には、踏み台等の可搬式のものの他、貨物自動車に設置されている昇降用のステップ等も含まれています。昇降ステップはできるだけ乗降グリップ等による三点支持により、安全に昇り降りできるものがよいとされています。
もちろんこちら『街建プロ』でもその昇降設備(ステップ)にあたるものを取り扱っています。
貨物自動車(トラック)の荷台の「あおり」を立てたままでも、下ろしても設置可能なもの。ステップの脚が伸び縮みすることで、荷台の高さに合わせて調節することができるもの。手すりが付くことで3点支持の昇降を可能にし、安全を確保できるもの。昇降設備の組立や収納がワンタッチで操作でき、手すり、天板が折りたためて、保管、持ち運びに便利なこと。
これらを併せ持った商品が株式会社ナカオのアルミ製トラック昇降ステップ『トラックライム REGシリーズ』です。
本題のテーマに入る前に、建築現場や建築資材を扱う倉庫など、荷役作業も行うところでは知っておきたい内容かと思い、「労働安全衛生規則の改正」について少し触れさせていただきました。
さていよいよ本題ですが、現場作業などで普段からよく使うものだからこそ改めて意識したい「はしご」、「脚立」、「足場台」の安全な使い方や安全な製品の選び方などをこれからご紹介していきます。
「はしご」や「脚立」、「足場台」等に限らず、このような製品には皆様が安心して使用できるようにさまざまな安全基準や製品規格が設けられています。そしてその基準をクリアーしたものに表示することができるマークがあります。
そのいくつかを紹介していきます。
JISへの適合性の審査をクリアーした場合、認証を受けた製品に対して表示することができるマークです。
そもそもJISとはJapanese Industrial Standards「日本産業規格」で、国の産業標準化の促進を目的とする産業標準化法に基づいて制定されている国家規格です。
安全で安心なアルミ製品を提供するために、「軽金属製品協会はしご脚立部会基準」に適合していると認められた製品のみに表示できるマークです。
「アルミ製品」の「安全」、「安心」の頭文字『A』をとってAマークと呼ばれています。ちなみに「はしご脚立」のAマークの他に、フライパンや鍋のような調理器具に与えられるAマークもあります。
「製品安全協会の安全基準」に適合していると認められた製品に表示できるマークです。SG基準は「使い易さ」も安全の条件とし、実用性を重視した上で安全を作り込んだものになっています。誤使用は事故の元と考え、使い方(表示・取扱説明書)もセットで定められています。
厚生労働省より認定された「仮設工業会の規格」に合格し、認定・承認された製品に表示できるマークです。
今使おうとしている製品が安全な製品か現場で使うにあたり適切なものか、さまざまな認定規格マークによってある程度判断できることは分かりました。
ただ使用している製品がいくら安全なものであっても正しい方法で適切に使用しなければ安全は確保できません。
次は「はしご」や「脚立」、「足場台」の安全な使用方法についてお伝えしていきます。
はしごを立てかける時は水平な面(地面)と「踏ざん」(ふみざん)を並行にしてください。そうすることで「はしご」の昇降面を正面から見た時に、はしごと地面との角度が【90度】になり、使用するにあたり適切な角度となります。
はしごは昇降面の左右方向に転倒しやすいので十分注意が必要です。
水平な面に「はしご」を設置した時、はしご上部と屋根や壁などとの接点に向かって斜めに立てかけることになります。その地面と「はしご」との角度は【75度】が適切とされています。
水平な面にはしごを設置した時、角度が立ちすぎると後ろへ転倒しやすくなります。逆にはしごが寝すぎると、はしごがすべってしまい危険です。昇降のしやすさも考えますと【75度】が適切な角度とされているのはそういった理由からです。
はしごを屋根などに立てかけた際、上から【2段目】の「踏ざん」と【3段目】の踏ざんとの間に、屋根と「はしご」との接点がくるようになることが理想的です。
2連、3連のはしごの場合、はしごのロープは邪魔にならない場所にしばり付けてください。2連、3連のはしごでは昇る前には必ず、ロック金具で確実にロックされているか確認してください。
その他はしごの使用に限ったとこではありませんが、使用の際に気を付けていただきたい点がいくつかあります。 以下も安全を確保するためにはとても大切なポイントです。
・設置する時や持ち運ぶ時は配電線に注意する。
・はしごから身体を乗り出さない。
・はしごはあくまでも昇降するためのものですので、はしごの上で作業をしない。
・作業帽(ヘルメット)を着用する。
・両手、両足を使って1段ずつ昇降する。
・滑りにくい履物を使用する。はしごを下で支える補助者は両手でしっかり支える。
画像出典:©一般社団法人軽金属製品協会(無断転用禁止)
街建では転倒しにくい「はしご」として昇降面の左右に『アウトリガー』を装備したものがございます。
三連伸縮はしご レン太(3レン太7.0・Aタイプ)3REN-7.0A ナカオ
水平レベル調整機能付きのアウトリガーが装備され安全を確保しているだけでなく、安全な「立てかけ角度」の75度がすぐわかる側面シールが付いています。
240pタイプ以上の脚立の上で作業する場合は、【天板を含めて上から3段目】以下(より下)の「踏ざん」に乗り、天板や「踏ざん」(ふみざん)に身体を当てて、安定させた状態で作業してください。
脚立が210pタイプ以下の場合は【天板を含めて上から2段目】以下(より下)の「踏ざん」に乗っての作業になります。
2m以上の高所作業時は保護帽(ヘルメット)と墜落制止用器具を着用してください。
昇降面の左右方向に転倒しやすいので十分注意してください。
脚立から身体を乗り出してはいけません。上向きで作業をすることも禁止されています。
天板に乗ったり、座ったり、またがらないでください。
はしごとしても使用できる「兼用脚立」の場合、はしごの裏面を使用してはいけません。どちらへ折れ曲がる構造かを確認してください。
はしごとして使用する場合でも、脚立として使用する場合でも、「開き止め金具」は確実にロックしてください。
その他脚立の使用に限ったとこではありませんが、使用の際に気を付けていただきたいことがいくつかあります。
・作業帽(ヘルメット)を着用する。
・両手、両足を使って1段ずつ昇降する。
・滑りにくい履物を使用する。
・兼用脚立を「はしご」として使用する場合、下で支える補助者は両手でしっかり支える。
・脚立をはしごとして使用する場合、地面と「はしご」との適切な角度は【75度】。
画像出典:©一般社団法人軽金属製品協会(無断転用禁止)
街建では脚立の脚を伸縮させる際に、しゃがみ込むことなく操作できる「上部操作バー」(伸縮操作バー)の付いた『スタッピーシリーズ』を取り扱っております。
Stapi(スタッピー)四脚アジャスト式はしご兼用脚立 SCN-120A
脚立としては使用できるのはもちろん「はしご」としても使用できる兼用脚立です。踏ざんは55oあり安心の幅広です。
「開き止め金具」は確実にロックし、設置後はガタツキがないか確認してから使用してください。
足場台から身体を乗り出さないでください。
足場台を背にして昇り降りすると危険です。昇降面に対して正面を向いて昇り降りしてください。
天板の上では端に乗ったり、つま先立ちをしたり、片足で立つことはとても危険です。
天板上での作業時、壁や物を無理に押したり引いたりしないでください。足場台は昇降面の左右方向に転倒しやすいので十分注意してください。
「身長」+「足場台の高さ」=「作業の高さ」を十分考慮し使用する足場台を選んでください。
画像出典:©一般社団法人軽金属製品協会(無断転用禁止)
足場台に「手がかり棒」が標準装備されており、足場台の昇降時に使用することで安心して昇り降りできます。
標準装備の手がかり棒にオプションの「セーフティガード」を取り付けることで天板側面からの転落対策にもなります。こちらはセーフティガードも一緒にたためて収納しやすく便利です。セーフティガードを装着することで『NETIS』(国土交通省 新技術情報システム)の登録対象製品になります。
街建では「楽駝 スカイシリーズSKY-15-4」にオプションのセーフティガードが2本付いたNETIS登録品として扱っております。
(2023年10月現在)
その他街建では、足場台でも脚を伸縮させる際にしゃがみ込むことなく操作できる「上部操作バー」(伸縮操作バー)の付いた『スタッピーシリーズ』を取り扱っております。
Stapi(スタッピー)四脚アジャスト式足場台 DXJ-6908A
脚を伸縮させる上部操作バーの端を引き上げれば、1脚を伸縮することができ、真ん中を引き上げれば2脚を伸縮することができて便利です。
第56回街建コラム『安全に使う「はしご」、「脚立」、「足場台」』はいかがでしたでしょうか。普段はしっくい、モルタル、セメントといった建築材料の特徴や使い方、その歴史などについてお伝えすることの多い街建コラムですが、今回は少し目線を変えて現場等での『安全・安心』について考えてみました。
これからも街建コラムでは商品紹介だけではなく、皆様のお役に立てそうな情報を少しずつでもお伝えできればと考えております。それではまた街建コラム、街建Facebookでお会いしましょう。街建の中のヒト4号でした。最後までお読みいただきありがとうございました。ご安全に。
※商品をご使用の際は、その使用前に必ず取扱説明書をよくお読みいただき、安全にお使いください。