街を歩いていて目に飛び込んでくるカラフルな壁や鮮やかな舗装。その中でもシックで目を引く黒色の壁。
モダンでスタイリッシュ。重厚感のある黒い壁にワンポイントで明るい色のオブジェ...とてもエレガントですよね。
以前の街建コラムで「カラーコンクリートとは?」(https://machiken-pro.jp/shop/pages/column057.aspx)を掲載し、街を彩るカラーコンクリート全般について書きましたが、今回はその中でも人気の高い「黒色の無機顔料」について調べてみました。
《目次》このコラムの内容は...
顔料とは、物に色を着けるための細かい粉末で、絵具、インク、化粧品、プラスチックなどの製品に使われています。我々の業界ではセメントに混ぜてカラーコンクリートにすることで、街に彩りを与えるような使い方をしています。
また、顔料には主に無機顔料と有機顔料があります。
無機顔料は、天然または人工的に生成された無機化合物で、耐久性や光に対する耐性が高く、長期間色が変わりにくい特徴があります。
金属酸化物や硫化物などを基にして作られていて、酸化鉄や二酸化チタン、コバルトブルーなどが代表的です。
有機顔料は、炭素を基盤とした有機化合物から作られた顔料です。
植物や石油化学製品など、炭素を含む成分を原料にしています。
アゾ系、フタロシアニン系、キナクリドン系などが代表的です。
無機顔料は、色は一般的に落ち着いていて、安定した色合いが特徴です。無機顔料は、くすんだ色や暗いトーンが多いです。耐久性が高く、光や熱、化学物質に強いため、長期間にわたって色が変わりにくいのが特徴です。外壁やコンクリート、屋外塗料などに適しています。
比較的安価で、工業的にも大量に生産されることが多いです。建築材料や一般的な工業製品に広く使われています。
有機顔料は、色が非常に鮮やかで、明るい色合いが特徴です。特に赤や青、黄など、強烈で生き生きとした色彩を出すことができます。無機顔料と比較して、光や熱、化学物質に対する耐久性が劣ることがあります。特に、紫外線にさらされると色あせしやすい傾向がありますが、その分、室内用途や短期間の用途に適しています。
簡単に言うと、無機顔料は耐久性や安定性に優れ、有機顔料は色の鮮やかさが特徴で、それぞれの特性に応じて適切な用途に使い分けられています。
無機化合物は、有機溶媒には溶けにくいが水には溶けやすい性質を持っています。
完全に水に溶けるものは染料、溶けずに分散されることで溶けたように見えるのが顔料です。
一方、有機化合物は、有機溶媒に溶けやすく、水には溶けにくい無機物の逆の性質を持っています。
これにより、無機顔料、無機染料、有機顔料、有機染料に分別されます。
簡単な表にすると、
有機溶媒に溶けやすい | 有機溶媒に溶けにくい | |
---|---|---|
水に溶けやすい | 有機染料 | 無機染料 |
水に溶けにくい | 有機顔料 | 無機顔料 |
こんな感じでしょうか...。
例えば、顔料は水や油の中に細かく分散することで色をつけますが、実際に水や油に溶解するわけではありません。これに対して、染料は溶媒に溶けて素材に染み込みます。
顔料が水に溶けない性質のおかげで、耐水性や耐光性が高く、長時間色が持続するという利点があります。特に無機顔料は、これらの特性が際立っており、屋外での使用や建築材料など、厳しい環境での使用に適しています。
建築材料として主に使われるのは、以下の2種類です。
カーボンブラックは、最も一般的な黒の無機顔料で、炭素を主成分とする微細な粒子です。黒の顔料の中でも非常に深く濃い黒を出すことができ、光や紫外線に対する耐性が高いのが特徴です。
カーボンブラックは、天然ガスや石油を不完全燃焼させて作られた顔料の総称で、石油を原料とするものを「ファーネスブラック」、加熱した炉にアセチレンガスを送り込んで分解させて作られる「アセチレンブラック」、鉱物油または植物油を使ったものを「油煙」または「ランプブラック」と言います。
また、油の代わりに松脂類を燃やして作ったものを「松煙」と呼びます。
他にも動物の骨を焼いて作った「ボーンブラック(骨炭)」、象牙から作った「アイボリーブラック」などがあります。
カーボンブラックは、そのままでは水になじみにくいため、左官材料着色剤として使うと分散されずムラになりやすく、非常に施工が難しいです。カーボンブラックを界面活性剤で処理した商品がありますので、それを使用することをオススメします。
カーボンブラックの化学式は炭素(C)です。炭素を含む化合物は有機化合物と言われています。
有機化合物は燃やすと真っ黒に焦げて炭になります。その際に二酸化炭素を発生させる性質を持っています。
炭素そのものや一酸化炭素、二酸化炭素も炭素を含むので有機化合物に含まれそうですが、燃やしても二酸化炭素を発生させるという性質に当てはまらないため、無機化合物となるようです。
俗に鉄黒と呼ばれています。四酸化三鉄を主成分とする黒色顔料で、カーボンブラックよりややくすんだ黒が特徴です。非常に安定した色合いで、耐久性や耐候性にも優れています。
しかし、ほとんど焼成していないので、不安定な傾向があり、150℃以上に加熱されると赤みを帯びることがあります。また、カーボンブラックと比べて着色力が悪いので使用量を多くする必要があり、コスト的には不利ですが、使いやすさや性能は優っています。
カーボンブラックと比較して強度低下の恐れが少ないのも特徴です。
『ゲゲゲの鬼太郎』でおなじみの「ぬりかべ」をイメージキャラクターにしている1901年創業、左官資材をはじめ建築材料、建築機械器具の総合商社です。左官資材をはじめとして、吹付・防水・断熱・塗装・タイル・石材・土木・住宅関連等、幅広い分野の商材を取り扱っています。
ヤブ原では1930年からモルタル・コンクリート・漆喰などの着色剤「マイン」を販売しています。
ドイツに本社を置くランクセスグループの日本法人として、世界の生産拠点から化学品を輸入し、自動車、タイヤ、IT、電機・電子、農業、医薬、水処理業界などへ販売している企業です。
創業210年以上の墨造りに裏付された製墨技術を基に、高品質の液体墨等を開発・製造・卸売をしている奈良の老舗企業です。
黒と言っても当然商品の種類や混ぜる量によっても色相や濃度が異なります。
ということで、ヤブ原の無機系セメント着色剤「マインブラック」「マイン特黒B」「マインバイエル黒(318)」を塗り比べてみました。画面だと分かりにくいかもしれませんが、塗り板の画像です。(セメント重量の5%配合)
炭素90.0%と炭酸カルシウム10.0%を配合したマインブラックは、黒色の成分である炭素の量が他の2色と比べてやや少ないためか、薄い黒に見えます。
96.0%の四酸化三鉄に二酸化ケイ素などを配合したマインバイエル黒(318)は、四酸化三鉄の特徴らしさのある少しくすんだ黒ですね。
92.0%の炭素に二酸化ケイ素などを配合したマイン特黒Bは、今回の3つの中では一番黒っぽい仕上がりです。
今回、中学の理科で習った有機、無機そして炭素について調べてみました。当時はその上っ面を覚えるのが精一杯で、なぜそうなるのか?どういったことに利用されるかなどは考えもしませんでした。まぁ興味を持てなかったので仕方がないですが...(汗)
もっと興味があれば違う世界線で生活していたかもしれません。
ただ、勉強して新しい知識を吸収する楽しさは、大人になってから感じる人の方が多いかもしれませんね。
さて、黒ごま団子でも食べましょうかね。