左官職人 八幡吉彦氏 特別インタビュー「こだわりの道具・材料」

街建のご利用ありがとうございます。街建のなかのヒト3号です。
街建プロの正式オープンということで、街建をご利用いただいている左官職人さんに、「こだわりの道具・材料」というテーマでお話を聞いてきました。
有限会社八幡工業は、東京都葛飾区水元にある左官工事から、リフォーム工事全般、公共工事までされている会社です。八幡工業では自然素材を使った伝統の技法はもちろん、古くからの技術を生かし新しい左官を追い求めている集団です。

修行先の親方からもらった鏝

── 普段使われている道具はどのような所が気に入られていますか?

「こだわりの道具」というタイトルですが、僕のこだわりは、そんなに高価な物ではないですよ。ただ、僕がこだわって持っているのは修行先の親方からもらった鏝たちですね。

鏝は安いからダメという事は無くて、自分に合うかどうかで、買った時にまだ7〜8割ぐらい、その後手直しして使って、塗り方とかの癖で手になじんでいきますね。
全国大会に2回出させてもらっているんですけど、これはその時に使っていた鏝たちなんですね。だから思い入れが強いんです。これは中でも大事にしている鏝です。木箱に入ってるのは大会に出た時のまんまです。別にすごい高い鏝でも何でもなくて、これなんかは使い古した鏝です。
別に高い鏝を買ったからって合うか合わないかは別なんですね。使いやすいのはこれ。これは西勘総本店で買った500円の鏝なんですよ。これがもうめっちゃ使いやすいんですよ、僕の中では。使い込んでます。

「こだわり」ではないですが、いつも持っているものとして...。

最近、災害の問題とか色々あるじゃないですか。大震災の後に、ビジネスバックからリュックサックに変えたんですよ。で、いろんなものを非常用で入れてあって、仕事用とプライベート用の兼用でね。
僕、結構ビビり症なので、鈴とか、笛とか。この笛は某メーカーさんからもらいました。紙に自分の血液型とか書いて入れています。
現場に行く職人はみんなリュック持ってるじゃないですか。だからそこに非常グッズを入れておくべきですね。
震災の直後はカンパンとか入れてましたもん。携帯電話の充電パックも3回充電できるものをフル充電してます(笑)

店づくりについて

── 敷地内にカフェが併設されていたり、事務所のインテリアを作りこまれていたりして、ここまでされているところは少ないと思いますが、こちらの事務所をオープンされたきっかけや思いを聞かせてください。

今から10年位前、僕がここに入ってきたときは、普通の一般的な左官屋でした。今トレーラーハウスがあるところには砂が置いてあって、こっちにはセメントと、砂利があって「THE 倉庫」という感じだったんですけど。

まずここのショールームを作ろうという事になったのは、仕上材を扱うようになったからですね。漆喰を扱うようになったら、まず工務店さんが付いてきますよね。工務店さんは、こういうテイストの漆喰を扱っているので、家もこういうテイストの家になってくるんですね。和の建物よりも洋風の建物が多くって。

塗り壁があって、一つの空間としてのまとまりが欲しいというのもあったから、ある程度デザインを入れ込んだ塗り壁のショールームを作りたかったんです。塗り壁だけにこだわらずに、タイルもそうだし、木もそうだし、明かりのスイッチ一つまでこだわって、色々なものを取り入れてまとめてそれが八幡工業のやれることだよ、っていうのを提案したかったというのがありますね。そこがきっかけになって、ここまでこだわる左官屋さんだったら細かいところまで目が行き届くんじゃないか、ただ壁を塗るんじゃなくて、色んな要望に応えてくれるんじゃないか、っていうのが広がるじゃないですか。

ナチュラ・ワイズ 東京都葛飾区西水元2-11-17 TEL:03-5876-3375 (定休日:水曜日)

そしてこのテイストを気に入ってくれた人達だけ来ればいいと僕は思っているので。というより、「何でもかんでも取り入れたい」という人は来ないと思っています。まずこのテイストが好きで来てもらって、その中に、僕らこれもできるよ、あれもできるよという広がりを演出したいです。入り口が狭くて、中に入ったらちょっと広がってる感じの方がお客さんとしても入り込み易いかなと。(笑)

ホームページも同じです。僕が思ってもみない所をいいと言ってくれて連絡くれることもあるはずなので、、とにかくまずは発信しなきゃ、と思って発信を続けてます。そうやって3年4年続けてたら、自分がやりたい仕事が来て、その後は、メーカーさんが目をかけてくれて、よりメーカーさんのそばにいることで材料もよく知れるし、仕事も入ってくるんですよね。

左官も絡めてデザインすると、重厚感+デザインがコラボできますね。塗装だけでもできないし、左官だけでも出来ない事を複合しているわけですね。
ガラスをからめたり、タイルをからめたり、デザインできればと思っているんです。

── 隣接するカフェについてはいかがですか?

ただ、ショールームだけじゃ全然人は来ないですよね。インターネット見て来る人はいますけど、地元の人はまず来ないですよ。ここがなんなのか分からないし、今まで倉庫みたいだったのに、美容室オープンしたんですか?みたいな。

人が出入りできないと、活気が無くなりますね。カフェが無いときなんかはもともと倉庫だったので、昼間はシーンとしちゃうんですよ。車も出ちゃうから。もったいないなって感じでした。

かといって、カフェにお客さんが入って、こちらのショールームに流れてくるのは100人いたら1人とか2人なんですね。オープンからまだ2年ですけど、これがもうちょっと定着して、長いことやれば、もう少し、こう、増えていくかなと思います。

▲カフェサンワイズ 東京都葛飾区西水元2-11-17 TEL:03-5876-3268 (定休日:日・月・祝)

「街建プロ」について

── 街建プロは、使ってみてどう思われましたか?

いいなぁと思ったのは、特集記事があるじゃないですか。セメントの特集とか、京壁の特集とか。その辺はいいなぁと思いました。それで、どういうふうにそこに興味があってそこに入っていくかが大事なので。

僕らは左官屋だからセメントの特集があれば見たくなりますけど、このサイトは一般の人も見れるし買えるじゃないですか。一般の人がもっともっと興味を引く、違う見せ方があって、最終的に行き着くようにした方がいいかなと。

── 登録店舗についてはいかがでしょうか?

商品は何でも安いに越したことはないんですが、長い目で見れば信頼のおける堅実なお店から買っておけば良かったと思うことが結構あります。やっぱありますもん。うちの社員でも間に合わせか分からないけど、「あ、急ぎだから高い材料買っちゃったかな」とか。ありますからね。でも、そうじゃなくて、信頼のおけるところが街建に登録されているから、皆頼ると思う。

── これからの街建に一言お願いします!

やっぱりもっともっと、ネットワークを広げていってもらいたい。もっとお店が一杯になるといいですね。僕が見たら「遠いなぁ」って思いました。東京・関東で見ても加盟店がまだまだ少ないなって。チラシのマンガじゃないけど、サッと買いに行ってサッと引き取れる感じじゃなくて。。。ホームセンターの方が近いんじゃないかという。

「あ、街建(のお店)があった」って今はまだ思えないじゃないですか。今のところ僕の頭では「どっかにホームセンター無いかな」とかっていうのが先になるんで。それを街建だ!と思わせるには、お店の数を増やすしかないんじゃないかなぁって。そうすれば心強いなぁって。僕が毎日現場に出てる頃はネットが出来る携帯電話がなかったんで、その頃は近くの建材店探すのが本当に大変で。

今だとうちの職人はすぐ調べてますね。近くの建材屋って。グーグルで調べて、砂ありますか?セメントありますか?C-トップありますか?って。それで行って買っちゃう。

最後に

── 最後にオススメのカフェやレストランを教えていただけますか?

うちのカフェをオープンする前に、コーヒーの淹れ方の修行をさせてもらった塗り壁つながりのトコで、岡山で有名な「トスティーノコーヒー」っていうカフェですね。

そこではいろんなブレンドをしてて、そこのオーナーがうちのお店を見に来てくれた時に、「うちの店に合ったブレンドにしてくれと。」と要望を出したら、普通とはちょっと違う、こだわってますよっていうオリジナルブレンドを作ってくれました。

ただ、そこまでこだわって作ったブレンドを淹れるのにやはり不安ってあるじゃないですか、それで、「素人とプロの一番の大きな違いってなんですか?」って聞いたんですよ。そしたら「カップを温めることだ」って。あ、そんな簡単な事なのかと。(笑)
その一言で、なんか自信付きましたね。

▲有限会社八幡工業 専務 八幡吉彦氏

有限会社八幡工業

東京都葛飾区西水元2-11-17
連絡先:03-3609-2222
http://www.yawata-sakan.com


まずは地元に立ち寄れる左官のお店を作りたいとお話しされていたのが印象的でした。
街建も気軽に立ち寄れるサイトを目指していきたいと思います!